2014 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変マウスを用いたプラスミノーゲン栃木変異と血栓症の検討
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25860801
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田嶌 優子 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (10423104)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プラスミノーゲン / 線溶 / 静脈血栓症 / 肺塞栓 / プラスミノーゲン栃木変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラスミノーゲン栃木変異(A620T変異)は日本人の静脈血栓症患者に同定され、血液中の線溶因子プラスミンの活性低下をひきおこす。本研究では、本変異に相当するプラスミノーゲン-A622T変異のホモ接合体マウスと静脈血栓症発症との関連を明らかにすることを目的とした。 平成25年度の実験結果から、本変異は単独では動静脈血栓症を重篤化しないことがわかった。平成26年度は、血漿プラスミン活性のさらに詳細な解析を行った。プラスミノーゲンの主要産生組織である肝臓からRNAを抽出し、定量RT-PCRを行い、栃木変異型プラスミノーゲンのmRNA量は、野生型プラスミノーゲンの約1.2倍であることがわかった。また、血漿中の栃木変異型プラスミノーゲンの蛋白発現量及び分子量は、野生型プラスミノーゲンと同等であること、プラスミノーゲンからプラスミンへのサイズ変換は正常に起きていることをウエスタンブロットで確認した。本変異マウスの血漿プラスミンによるフィブリン塊溶解活性は、野生型マウスの血漿の約二倍の時間を要した。 また、本変異と凝固因子プロテインS徳島変異の両方をもつ重症静脈血栓症患者が見つかっていることから、プラスミノーゲン栃木変異が、他の血栓性素因による症状を悪化させる修飾因子として働く可能性について検討した。平成25年度に作製した二重変異マウスの血栓症症状の解析を行ったが、血栓症状の重篤化は認められなかった。 最後に、プラスミノーゲン欠損マウスでは、創傷治癒の遅延が報告されているので、本変異の組織修復への影響について皮膚創傷治癒モデル実験で検討した。本変異マウスは、野生型と同様に、傷口は14日目に完治し、創傷治癒の遅延は観察されなかった。 以上の結果から、日本人に高頻度に見られるプラスミノーゲン栃木変異は線溶能低下をもたらすものの、動静脈血栓塞栓症の増悪要因とはならないと考えられる。
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Research Products
(5 results)