2013 Fiscal Year Research-status Report
IL-27による制御性T細胞誘導機構の解明―SLEの新規治療応用へ―
Project/Area Number |
25860803
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩崎 由希子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30592935)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 制御性T細胞 / IL-27 / 全身性エリテマトーデス / LAG3 / Egr2 |
Research Abstract |
当研究室の岡村らにより、転写因子early response gene 2 (Egr2)を特異的に発現するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性 新規制御性T細胞(以下LAG3 Treg)が同定されている。申請者は、サイトカインIL-27がナイーブCD4陽性T細胞にEgr2およびLAG3の双方の発現を誘導することを見出している。 平成25年度は、IL-27誘導性Egr2高発現CD4陽性T細胞の抗体産生抑制活性の解析を行った。まず、C57BL/6マウスよりナイーブCD4陽性T細胞を分離し、T細胞受容体刺激下で、IL-27添加・非添加で細胞を培養した。その後、培養したCD4陽性T細胞と新たにC57BL/6マウスより分離したB細胞を、B細胞刺激下で共培養し、抗体産生能とB細胞の分裂能を指標に、誘導された各T細胞機能による抑制能を評価した。その結果、IL-27刺激を受けたCD4陽性T細胞は、B細胞の抗体産生および分裂を有意に抑制することが明らかとなった。このことは、IL-27により抗体産生抑制能を持ったT細胞(以下、IL-27誘導性制御性T細胞)が誘導されることを示している。更に、申請者はIL-27により誘導されるEgr2の発現はSTAT3依存性であるという知見を得ており、当研究室で維持している各種STATノックアウトマウスを用いてLAG3 TregがいずれのSTAT依存性に誘導されているのかを検討した。興味深いことに、LAG3 Tregの存在比はSTAT3ノックアウトマウスで顕著に低下していることが判明した。このことは、定常状態でもLAG3 Tregの誘導にはSTAT3の関与が大きいことを意味している。IL-27によるSTAT3を介したEgr2誘導が、LAG3 Treg分化に関与している可能性もあると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、Egr2を介した、IL-27誘導性制御性T細胞の誘導メカニズムの解析を進め、ヒトの自己免疫疾患、特に全身性エリテマトーデスの治療応用に繋がる研究基盤を確立することである。平成25年度はIL-27刺激下で培養したナイーブCD4陽性T細胞が抗体産生抑制能を持つことを、in vitroの実験系で証明した。さらに、各種STATノックアウトマウスを使用することで、LAG3 Treg分化に関わる詳細なシグナル伝達機構も明らかにした。また、T細胞においてIL-27による抑制性サイトカインIL-10の誘導がEgr2を介していることを示した成果は、2013年第57回リウマチ学会総会・学術集会において国際ワークショップ賞として高く評価された。現段階ではヒトにおけるIL-27シグナルとEgr2の関係については明確な結論に至っていないものの、当初の目標であったIL-27誘導性制御性T細胞による抗体産生抑制能を証明し、更にシグナル伝達機構を含めた解析を行うことで当初の目標は達成しており、計画は概ね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
理化学研究所と当研究室との共同研究にて、EGR2がヒトの全身性エリテマトーデスの疾患感受性遺伝子であることを報告しており(Hum.Mol.Genet.19:2313-2320,2010)、またT細胞特異的Egr2コンディショナルノックアウトマウスは全身性エリテマトーデス様病態を呈することが知られている(J.Exp.Med. 2015:2295-2307,2008)。これらの知見は、自己抗体を介した自己免疫疾患の制御にEgr2が関与していることを強く示唆している。既に、当研究室の岡村らの検討によりLAG3 Tregが全身性エリテマトーデスモデルMRL/lprマウスの自己抗体産生、腎炎を抑制し、B細胞の抗体産生を抑制することが示されている。平成26年度はIL-27誘導性Egr2高発現CD4陽性T細胞のin vivoにおける抗体産生抑制能を解析し、将来的な細胞治療への応用に繋がる知見を得ることを目標とする。また、Egr2を介したIL-27シグナル伝達経路について、各種STATノックアウトマウスを用いながらより詳細な分子機構を解明したいと考えている。
|
Research Products
(5 results)