2013 Fiscal Year Research-status Report
骨破壊性疾患の新展開:間葉系幹細胞とナノファイバーシートによる関節再生医療の確立
Project/Area Number |
25860821
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
園本 格士朗 産業医科大学, 医学部, 助教 (20636914)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / 変形性関節症 / 再生医療 / 間葉系幹細胞 |
Research Abstract |
炎症性関節破壊を特徴とする関節リウマチ(RA)、変形性関節症(OA)では、既存治療に抵抗性で関節破壊が進行する患者が多く存在するが、破壊された関節を修復する治療法は確立されていない。関節再生には骨・軟骨への分化能を有する間葉系幹細胞(MSC)が有用と考えられ、MSC治療の確立に向け、平成25年度は1)患者由来MSCが持つ分化能、2)炎症が患者由来MSC分化に及ぼす影響をin vitroで検討した。 関節置換術予定のRA, OA患者より同意文書を取得し、手術中に破棄される骨髄液を回収し、骨髄液由来MSCを樹立した。1)これらのMSCは骨芽・軟骨・脂肪細胞分化誘導培地により、それぞれアリザリンレッドS陽性の骨芽細胞、サフラニンO陽性の軟骨細胞、オイルレッドO陽性の脂肪細胞へ分化することが確認された。2)炎症性サイトカインがMSCの骨芽細胞分化を促進することはすでに我々が報告したところである。今回、RA, OA患者由来MSCに骨芽細胞分化刺激およびIL-1βを添加すると、骨芽細胞分化のmaster regulatorであるRUNX2発現が上昇し、ALPおよびアリザリンレッドS発現が顕著となり、患者由来MSCの骨芽細胞分化がIL-1βにより強調されると考えられた。また、我々はIL-1βによる骨芽細胞分化誘導にWnt5a/Ror2経路が重要であることを報告しているが、健常人由来MSC、患者由来MSC間でIL-1β刺激下のWnt5a/Ror2発現レベルの差は明らかでなく、これらを合わせると健常人由来MSCとRAまたはOA患者由来MSCは同等の性格を持つと考えられた。これまで報告された臨床研究からMSC同種移植の安全性は知られているが、今回の結果から、MSC自家移植の可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初掲げた平成25年度の目標のうち、(1)骨芽細胞分化能、軟骨細胞分化能、脂肪細胞分化能、(3)炎症存在下における骨芽細胞分化能、(4)炎症による骨芽細胞分化誘導の分子機序解明については検討を終了した。 (2)破骨細胞分化阻害能は患者由来MSCの提供が否定期のため未達成である。
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Strategy for Future Research Activity |
関節再生には局所へのMSC移植が重要と考えられるが、関節内注射ではMSCが局所に留まらず、離散すると報告されている。そこで我々は細胞の足場を検討し、ポリ乳酸ファイバーに着目した。これは、細胞の生存や分化を誘導するといわれる三次元環境を提供し、nm~µm径の極細ファイバーからなり内部の80%が空洞であるため液性因子の浸透が容易で、カルシウムに親和性があるため骨再生に有利であり、また、成形性に優れ、さらに生体内で分解吸収されるといった特色を持つ。次年度以降はMSCをこのファイバーを播種しMSCの増殖能、分化能、サイトカイン産生能を評価したうえで動物モデルでの検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
健常人由来MSC、RA患者由来MSC、OA患者由来MSCでWnt5a/Ror2経路のmRNA発現レベルに差が見られなかったことから、DNAメチル化の程度も同等と考えられ、当初予定していたDNAメチル化解析を行なわなかった。また、患者MSC入手が不定期であったことから破骨細胞分化抑制能実験が進捗せず、余剰金が生じた。 本来、平成26-27年度は動物実験のみ行う予定であったが、新たな検討課題が生じており、引き続きin vitro実験も行う。健常人由来MSCの購入費用、MSC用培地の購入費用などが必要であり、今回の繰越金は使用予定である。
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