2014 Fiscal Year Research-status Report
経皮感作による食物アレルギー発症機序の解明と経皮免疫療法への応用
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25860851
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
河北 亜希子 福井大学, 医学部附属病院, 特命助教 (00584856)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経皮感作 / 食物アレルギー / 免疫療法 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究において、活性化VitD3等をアジュバントとして使用した経皮感作による食物アレルギー発症モデルを作成した。 腹腔感作による従来の食物アレルギーモデルでは、反復の経口抗原チャレンジにより体温低下や下痢症状等の即時型アレルギー症状を呈するが、我々の経皮感作モデルでは初回チャレンジより軽度の即時型症状を生じることに着目した。誘発症状が活性化VitD3のCa代謝作用による影響である可能性を除外するために、Ca代謝作用がほぼないとされるVitD3アナログ(カルシポトリオール:MC903)をアジュバントとして用いたところ、初回チャレンジより有意な低体温と下痢症状等を認め、また粘膜マスト細胞の活性化マーカーであるmucosal mast cell protease-1(mmcp-1)の上昇を伴い、マスト細胞の活性化・脱顆粒を伴う即時型アレルギー症状の誘発が確認された。その後の反復抗原チャレンジでは、症状が軽快傾向を示すものと増悪するものがみられた。症状推移に差異を生じる一つの要因として、感作後の抗原特異的IgE値の関与が示唆され、負荷前の抗原特異的IgEが低値のものでは、経口抗原摂取方法を工夫することで即時型アレルギー症状の軽快が得られる可能性が示唆された。 その後、感作時の抗原量や抗原チャレンジ間隔等の調整を行ったが、抗原特異的IgE値のみで症状の推移を決定付けることは困難であった。経皮感作モデルでは、従来の腹腔感作に比して、抗原特異的なIgE値は有意な上昇を認めるが、IgG1、IgG2a、IgAは低値を示すなど、異なる抗体価上昇パターンを示すことがこれまでの我々の実験で確認されており、IgE以外の抗体価やTh1、Th2細胞系のバランス等の抗体価以外の要因が症状推移に影響する可能性についても今後検討していく方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に作成した経皮感作による食物アレルギー発症モデルにおいて、アジュバントをMC903に変更することで、Ca代謝作用による影響を除外し、また初回の抗原チャレンジより即時型のアレルギー症状を呈する、新たな食物アレルギーモデルに改良することができた。 同モデルにおける反復抗原チャレンジによる誘発症状の推移には、感作後の抗原特異的IgE値が関与している可能性を見出した。しかしIgE値のみを指標とした感作条件の調整では誘発症状の安定した改善を得ることは困難であった。 同経皮感作モデルでは従来の腹腔感作モデルに比して抗原特異的IgE値の上昇を認めるも、IgG1、IgG2a、IgAは低値を示すなど異なる抗体価上昇パターンを示すことが見出された。今後はこれらの抗体価やサイトカイン産生等、他の因子も含め、即時型アレルギー症状の改善を得る条件について更なる検討を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に作成、改良できた経皮感作による食物アレルギー発症の動物モデルを用いて、チャレンジ時の誘発症状の推移に影響する因子について、引き続き抗体価やサイトカイン産生パターンなどを解析し検証していく。 またマスト細胞や好酸球等の制御が症状に及ぼす影響についても検討する。その一つとして皮膚症状の改善、または増悪が食物アレルギー症状の推移に影響しうるかを検証する。アトピー性皮膚炎治療に用いられるステロイド等の薬剤を用いることで、皮膚や腸管のマスト細胞を減少させ、食物アレルギー症状を改善させるかについて、また感作増強に作用するアジュバントが、感作後の誘発症状推移を増悪させるかについて、経口チャレンジ後の誘発症状や抗原特異的抗体価、組織像等を指標に比較検討していく。 経皮感作による食物アレルギー発症の抑制や症状の改善、または症状が増強された条件において、腸管や所属リンパ節における制御性T細胞の誘導やリンパ球サブセット、サイトカイン産生パターンについて評価する。また抗原曝露局所の組織像やTSLP等のサイトカインの産生パターンを解析し、発症抑制や増強に作用する機序を見出していく。 症状の抑制に作用する制御性細胞の誘導条件が明らかになれば、食物アレルギーを発症したマウスに対し、別の個体で誘導した制御性細胞を輸注することで食物アレルギーの抑制効果が得られるかを検証していく。
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Causes of Carryover |
本年度経皮感作による食物アレルギーモデルにおいて、抗体価を指標とした条件設定のみでは十分な誘発症状改善の条件は見いだせなかった。症状の改善、増悪に寄与する因子について、抗体価やサイトカイン産生パターン、細胞等の他の因子も含めた再解析が必要と考えられ、本年度購入予定の試薬や消耗品の購入を一部次年度にずらしている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は抗体価やサイトカイン産生パターンについての再解析を進めるとともに、症状誘発に作用するマスト細胞や好酸球の制御による治療介入についても検討していく方針としている。 また症状を改善させる治療法が明らかとなれば、同条件で誘導された制御性細胞等を、他の食物アレルギーを発症したマウスに輸注し、治療効果を検証する研究も進めていく方針としており、これらの実験の試薬や消耗品の購入に使用する計画としている。
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Research Products
(11 results)