2013 Fiscal Year Research-status Report
腎尿路奇形疾患のゲノム情報を基盤とした新しいヒトネフロン分化誘導系の構築
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25860862
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
庄野 朱美 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10535066)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腎尿路奇形 / 網羅的遺伝子解析 / 腎発生 / 腎再生 / 腎系譜分化誘導 / iPS細胞 |
Research Abstract |
高橋らのiPS細胞の発見により、難治性疾患の再生治療に期待が集まっている。これまで困難とされてきた腎ネフロン再生についても例外ではない。ヒト腎臓の器官再生を実現するためには、その発生過程のより詳細な理解が必要である。 これまでの腎発生に関する知見の多くがマウス等動物データを基盤としたものであり、ヒト-齧歯類間の臓器形態、大きさ、発達速度の種差についての情報は未だ不足している。したがって、今後ヒトとマウスの発生制御の情報を相互に補完し、ヒト腎再生に向けた応用的展開が大切である。 本研究は、先天性腎尿路奇形(CAKUT)の疾患機序に関わる、ヒト腎特異的な発生制御因子群とその相互作用の情報を活用し、新たな腎系譜in vitro分化誘導法を構築することを目的とする。 平成25年度は、CAKUT症例の遺伝学解析により、発生を制御する新規分子群を同定する手がかりを得ることを目標とし、1)ヒト先天性腎尿路奇形症例の収集とその臨床表現型分類、2)次世代シークエンサーやマイクロアレイを用いたゲノムワイド解析、を協力研究者とともに実施した。研究計画開始時に既に収集済みであった症例も含め、これまでに合計206症例を収集した(平成26年3月現在)。その内訳は、腎尿路奇形以外の神経症状などを伴うsyndromic CAKUTが91症例、腎尿路奇形のみのnon-syndromic CAKUTが115症例であった。そのうち約60症例は、ゲノム領域の広汎欠失やCNVを含め、既知遺伝子の変異として同定できた。次世代シークエンサーによる網羅的解析により、複合的変異による可能性を示唆する症例も検出され、今後in vitro実験を含めた責任遺伝子の同定実験を進め、次年度計画へとつなげる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の年次計画とした掲げた2項目につき、それぞれ次のように遂行できている。 1)ヒト先天性腎尿路奇形症例の収集とその臨床表現型分類:症例収集については、研究協力者らの学会や厚生労働省難病班Webサイト等における研究ネットワークを駆使した尽力的なアナウンスにより、効率的に実施できている。臨床表現型分類については、今後遺伝子解析の結果と併せて、より詳細に検討していく必要がある。 2)次世代シークエンサーやマイクロアレイを用いたゲノムワイド解析:遺伝学的診断が確定していない症例を対象として網羅的遺伝子解析を行うことにより、多数の疾患責任候補領域・遺伝子が見つかってきている。新規の疾患責任候補領域や遺伝子の絞り込みは時間を要するが、解析進行に伴う情報集積により、今後より迅速化が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、症例収集と遺伝子解析を引き続き実施すると共に、初年度の結果に基づいた1)詳細な表現型分類、および次年度計画である2)新規責任候補遺伝子の泌尿器発生における機能解析、を進めていく予定である。 1)詳細な表現型分類:これまで収集・解析した症例につき、臨床表現型と遺伝子解析結果を照らし合わせ、より詳細な分類を行い、今後、CAKUTの診断・治療法の開発に役立つ情報基盤を構築する。 2)新規責任候補遺伝子の泌尿器発生における機能解析:公開されているデータベースを参照し、発生学的機能が未解明であるものについて、発現時期・領域を詳細に解析し、ノックダウンやレポーターアッセイによる機能解析実験にて、泌尿器発生における役割を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヒトCAKUTは500人に1人と高頻度で発生する先天性疾患であり、神経症状などを併発するsyndromic CAKUTにおいては、既知遺伝子診断も進んでいる。ただし、既知遺伝子を対象としたスクリーニング法では解決できない症例や、軽度臨床症状を呈し遺伝子診断を実施しない症例も数多く存在していた。本研究を含め、我々は既知遺伝子以外も対象とした遺伝子スクリーニング法の確立に取り組んできているが、これまでの背景から本研究開始時においては、対象症例の研究班として収集を行っていることやその意義についてのアナウンスが浸透していなかったこともあり、症例収集に時間を要した。また既知遺伝子が原因遺伝子ある、従来のターゲットシークエンスで解決する症例もあり、網羅的遺伝子解析には至らない症例も少なくなかった。 協力研究者らの学会および研究班webサイトなどでのアナウンスにより、既知遺伝子では解決できない症例も数多く集まってきているため、今後、網羅的遺伝子解析に使用予定である。また、多くの症例について網羅的遺伝子解析を進め、疾患関連と想定される遺伝子の新規候補領域・変異を探索・同定するためには、よりスムーズな情報処理システム構築やin vitro実験系が必要となる。
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