2013 Fiscal Year Research-status Report
小児期粘膜免疫システム構築のメカニズムの解明と疾患関連腸内細菌の同定
Project/Area Number |
25860870
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瀧本 智仁 九州大学, 大学病院, 助教 (50599511)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | TGF-β / Smadシグナル / 原発性免疫不全症 / 腸内細菌叢 / 腸管免疫 / 制御性T細胞 |
Research Abstract |
ヒト小児期特有(特に日本人)の腸内細菌叢を解析し、更に、胎児期や新生児期等の小児期の免疫システム構築における腸内細菌叢や腸管粘膜免疫の関与・役割を検証することが本研究の目的である。腸内細菌叢は近年の多くの報告から、腸管粘膜免疫だけでなく、全身の免疫応答に寄与していることが明らかとなりつつある。このことは、無菌状態の個体である胎児から新たに腸内細菌叢を形成する小児期が、各個体の生理的・病的免疫系の構築に大きな影響を有する可能性があることを示唆する。TGF-βは母乳や腸管組織に豊富に存在するサイトカインであり、腸内細菌叢の形成に大きな影響を有すリンパ球や単球等の免疫細胞に対し様々な機能を有す。このことから、腸内細菌叢形成や腸管粘膜免疫に果たすTGF-βの役割を明らかにすることは、小児期の免疫系構築と腸内細菌叢形成の関連性を理解する上で重要と考えられる。 現在までに申請者らは、同年代の健常児と原発性免疫不全症患者の末梢血免疫細胞におけるTGF-βシグナル応答性を検討し、TGF-βによる免疫抑制作用やTGF-βの下流シグナルであるSmadシグナルが一部の原発性免疫不全症患者由来のリンパ球や単球で低下していることを見出した。本知見は、TGF-βシグナルにおける上記原発性免疫不全症の原因遺伝子の関与を示唆しており、更なる検討によって新規パスウェイを同定出来ることが期待される。また、上述のTGF-βシグナル異常が、本疾患の一部表現型の病態である可能性が示唆されることから、病態解明や新たな治療法の開発に繋がることも期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らは、既に一部の免疫疾患におけるTGF-βの応答異常を見出しており、患者免疫細胞のTGF-βシグナル異常も明らかにしている。これらの知見は新たなTGF-βシグナル・パスウェイの同定や上記免疫疾患の病態解明に繋がると期待される。更に、同疾患は腸管粘膜免疫異常を合併することが明らかとなっており、本疾患患者の腸内細菌叢を解析することで、腸管粘膜免疫・腸内細菌叢構築におけるTGF-βの機能的役割を検証することが可能となる。但し、平成25年度中に行う予定であった健常児及び免疫疾患患者の腸内細菌叢解析についてはまだ実施に至っておらず、次年度早々に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回TGF-βシグナル異常を見出した原発性免疫不全症患者を含めた種々の免疫疾患患者及び同年代の健常児の腸内細菌叢を解析し、それぞれの免疫学的特徴と腸内細菌叢の組成との関連性について検討する。また、本研究で明らかとなった同疾患で観察されるTGF-βシグナル異常の更なる分子生物学的検討を行い、未知の新規TGF-βシグナル経路を明らかににする
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に行う予定であった健常児及び免疫疾患患者の腸内細菌叢解析が、サンプル数が揃わず実施に至っていないため、同実験に使用予定であった研究費が繰り越しとなった。 サンプル数が揃い次第、上述の健常児及び免疫疾患患者の腸内細菌叢解析(16sリボソーム解析、メタゲノム解析など)を行うための試薬・器具などの物品購入費や解析費用として使用する予定である。
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