2013 Fiscal Year Research-status Report
インヒビター保有血友病A患者の新たな止血治療戦略における凝血学的基礎研究
Project/Area Number |
25860878
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
矢田 弘史 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (30635785)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 血友病 / インヒビター |
Research Abstract |
インヒビターを保有する血友病患者において、より凝血学的機能を向上させる治療方法の開発を目的として、本年度は、研究計画に従い、インヒビター存在下での血液凝固第VIII因子(FVIII)の活性化に関与する凝固メカニズムの解明と、FVIIIと他の凝固因子との相互作用について機能解析を進めた。研究の結果、FVIIIの変異体であるArg1781Hisは、野生型FVIIIと比較して第X因子との親和性が高いことが判明した。この結果はFVIIIの凝血学的特性に新たな知見をもたらすものである。 また、インヒビター患者に対する既存の治療製剤であるAPCC製剤は、インヒビターが存在してもFVIIIを活性化することができるということ、さらに現行の治療量よりも極少量のAPCC製剤であってもFVIII活性化を起こしうることを凝血学的及び免疫学的手法を用いて証明した。 一方、構築したFVIII製剤中和療法モデルによる検討により、中和療法の治療効果がインヒビターの特性(抗原認識領域や阻害カイネティクスの違い)によって異なることを証明した。これらの研究成果は、国内外の学会及び原著論文にて発表を行った。 加えて、本年度は、軽症血友病Aに発生したインヒビターを患者血漿より抽出し、そのインヒビターの特性及び抑制機序について解明し、さらに患者のFVIII遺伝子変異を有するFVIIImutantを発現し、その機能解析を行った。患者のFVIIIは遺伝子変異の存在する部位とは異なる部位の立体構造が変化していることが凝血学的及び免疫学的手法により示唆され、結果としてリン脂質とVWFとの結合能力が低下するとともに免疫原性の変化をもたらす可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
APCC製剤によるFVIII活性化・不活化におけるインヒビターの影響、FVIII製剤による中和療法におけるインヒビターの種類による影響について凝血学的手法及び免疫学的手法を用いて証明し、学会及び論文発表を行うことができた。血友病患者におけるFVIIIの機能、インヒビター出現との関連についても、蛋白発現実験及び凝血学的手法により検討を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた基礎的研究成果に基づいて、全血を用いた検討や血流存在下での検討などより生理的条件下での研究を引き続き進行し、学会発表及び論文発表を行う方針である。また、FVIIIの機能解析について得られた知見を論文化する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、予定通り研究実験を遂行した結果、試薬の節約等の努力により当初の使用額よりも少額の支出となった。次年度は、より発現実験等で支出が増えることが予想される。 次年度は、発現実験に伴う試薬や凝固因子、凝固測定試薬及び細胞培養に使用する消耗品等を購入予定としている。
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