2015 Fiscal Year Research-status Report
ライソゾーム蓄積病の骨髄移植における必要最低骨髄細胞生着率の検討
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25860884
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
横井 健太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20459655)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハンター症候群 / 骨髄移植 / キメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
ライソゾーム蓄積病の1つであるハンター症候群では、酵素活性のわずかな違いにより臨床症状の出現時期や重症度に大きな違いが生じることが報告されており、患者さんの負担を軽減したうえで効果的な混合キメラ状態を作り出すことは臨床上、大変有意義である。そこでモデルマウスを用いて、どの程度の混合キメラ状態が100%のドナー細胞タイプと同等の効果を示すか、生化学的パラメーターを指標に解明し、ライソゾーム病の骨髄移植(BMT)における必要最低骨髄細胞生着率の指標を検討した。移植後の移植マウスにおける末梢血全白血球のキメリズムは、移植された際のドナー細胞の割合とほぼ同様であった。各キメラ群は肝臓と脾臓において有意に酵素活性の上昇と蓄積物質の低下を認め、心臓では75%キメラ群で有意に酵素活性の上昇との低下を示した。しかし、中枢神経における改善は100%のドナー細胞タイプであっても乏しく、骨髄移植単独による治療では解決されない課題となった。一方で、現在の移植指針では何らかの理由で移植後に生着不全からドナー細胞の割合が低下した場合には、ドナーリンパ球輸注による2次移植を施行すべきと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究結果の多くはすでに小児科学会学術集会や先天代謝異常学会で発表され、2015年3月には欧州代謝異常学会誌に論文が受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
ハンター症候群における骨髄移植が主要な標的臓器、特に中枢神経病変の改善に乏しいことが確認された。肝臓や脾臓といった造血幹細胞の豊富な臓器以外では酵素の直接補充が最も容易に施行されるため、効率的で安全な酵素補充療法を確立する必要がある。今後は骨髄移植の前処置を参考に免疫抑制、特に酵素に対する抗体産生予防に重点を置いた治療方法の確立を目指す。また、本移植結果は将来ハンター症候群における遺伝子治療がより実現性を増した場合には参考になるため、合わせて遺伝子治療に関しても基礎研究を進めていくつもりである。
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Causes of Carryover |
研究結果を元に、移植による治療効果を失わない程度の骨髄移植後のキメラ状態を観察期間を延ばして研究するため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
致死的な放射線照射量を照射されたモデルマウスに対して経静脈的に、様々な割合で混合された正常マウスの骨髄細胞を移植し、各移植群、コントロールマウス群それぞれで、移植後56日・84・112日に生着率を検討し、さらに移植後112日に、大脳、小脳、心臓、肝、腎、脾における酵素活性測定および蓄積物質の測定を行う。
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