2014 Fiscal Year Research-status Report
重症紫斑病性腎炎(HSPN)に対するシクロスポリンの有効性とその機序に関する検討
Project/Area Number |
25860890
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
木全 貴久 関西医科大学, 医学部, 講師 (90593517)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 小児 / IgA血管炎 / 紫斑病性腎炎 / ネフローゼ症候群 / シクロスポリン / ポドサイト / ポドカリキシン / シナプトポディン |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に紫斑病性腎炎(HSPN)の予後は 良好であるが、2-3%は末期腎不全に到る。重症例に はステロイドパルス療法、カクテル療法などが行われるが、これらの治療にも反応しない難治例が存在 する。近年、難治例にシクロスポリンA(CsA)の有 効性が報告されている。HSPNに対するCsAの作用機序は不明であるが、最近、特発性ネフローゼ症候 群において、「CsAはポドサイトのアクチン細胞骨格を直接の標的としており、その安定化により抗蛋白尿効果を示す」ことが示唆されている。「HSPNに対するCsAの作用機序はポドサイトへの直接作用である」という仮説を立て、その検証を行った。【対象】3歳11か月の女児。紫斑と腹痛を主訴としlgA血管炎の診断で近医に入院した。 入院2週間後から血尿と蛋白尿が出現しHSPNと診断した。尿蛋白量は42病日に0.1g/kg/day以上となりネフローゼ症候群と診断した。当科に紹介後48病日に腎生検を施行しHSPNのISKDⅢaと診断した。53病日からCsA(4.5mg/kg/day)の内服を開始したところ尿蛋白は開始後6週間で消失した。【方法】CsAを投与する前後の尿中ポドサイト関連分子のmRNA発現量の変化を検討した。すなわちCsA投与前後1週間の早朝尿からmRNAを抽出し逆転写後、ポドシンとシナプトポディンのプライマーを用いてリアルタイムPCRを行った。投与前後の尿中ポドサイト関連分子のmRNA発現量の比較検討にした。【結果】ポドシンはCsA投与前[検体数n=5、中央値33.9(四分位値10.2-129.4)mRNA/gCRE:以下同様]と比較してCsA投与後[n=5、1202.3(427.8-1324.4)]に有意に増加した(p=0.0472)。 シナプトポディンもCsA投与前[n=5、104.8(91.1- 142.2)]と比較してCsA投与後[n=5、739.8(704.7- 2859.6)]に有意に増加した(p=0.0163)。【考察】HSPN におけるCsAの抗蛋白尿効果発現機序としてシナプトポディンへの直接作用が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、20歳未満のHSPN症例のうち、ネフローゼ症候群を呈する患者、1か月以上尿蛋白/Crが0.5g/gCr以上持続する患児に対して腎生検を行い、ISKDC分類gradeⅢ以上かつ、文書による同意を得られた患児を対象としているが、現在この基準を満たした症例は、3例であったため、3年間の目標症例数の20例を大きく下回っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は重症例を対象としているため症例が少なく、1症例ずつをより詳細に検討することとする。すなわち、ポドサイト数、ポドカリキシン、尿中8OHdGだけでなく、随時尿のsynaptopodinのmRNA、c-mip mRNA、Fractalkine (CX3CL1)なども検討項目に加え、シクロスポリン投与前後で各種マーカーの動きを検討する。少ない症例数であっても、同一症例でシクロスポリン投与前後の各種マーカーの動きを詳細に検討することで紫斑病性腎炎に対する抗尿蛋白作用の作用機序は、シクロスポリンのsynaptopodinに対する作用であることを証明する。
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Causes of Carryover |
対象症例が少なく、予定検体数の検査が行えなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在も引き続き、症例を増やしており、新規の2症例について、現在各種の検体を凍結保存しているため、測定を進める。
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