2013 Fiscal Year Research-status Report
先天性小耳症・外耳道閉鎖症を引き起こす発現遺伝子の網羅的解析
Project/Area Number |
25860902
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
船本 聖絵 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 技術補佐員 (30570030)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 先天性奇形 / 小耳症 / ビタミンA |
Research Abstract |
先天性奇形の一つである小耳症および外耳道閉鎖症は、社会的ハンディとなる難聴を伴う重篤な疾患である。その発症率は、片側小耳症・外耳道閉鎖症は1万人に1~2人、両側小耳症・外耳道閉鎖症は10万人に1人である。発症する原因として、染色体異常や症候群との関連性などが報告されているが、環境に由来する因子(妊娠期の薬剤による暴露や、ビタミンAの過剰摂取など)が大きく、原因究明には至っていない。 ビタミンAは、大きくレチノール・レチナール・レチノイン酸の3種類に分類され、特に網膜の正常機能維持、成長と分化の調節、免疫機能の維持など、生体にとって必須栄養素である。主に発生ではレチノイン酸が直接的に関与しており、欠乏しても過剰でも生体に異常を及ぼす。 しかし妊婦がビタミンA(レチノイン酸)を過剰に摂取した場合、小耳症および外耳道閉鎖症を含む様々な胎児催奇形性を引き起すという報告がある。ヒト発生における耳介形成に関する詳細なメカニズムは未だ解明されていない。そこで本研究では、耳介および外耳道の発生におけるカスケードが「いつ・どのように」阻害されるのかを明らかにするため、時系列に沿った様々な手法による解析を計画した。 まず本年度は、妊娠マウスへのレチノイン酸過剰投与を行い、小耳症を発症する胎生時期およびレチノイン酸の適正量を絞り込み、最終的には小耳症マウスモデルを作成する事に成功した。しかしながら、レチノイン酸を過剰投与したマウスから誕生した新生仔は、24h以内にすべて死亡、当初の計画であった耳介挙上をする生後7日までの観察は不可能であった。そこで胎生期に胎仔を取り出し、サンプル化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、妊娠マウスへのビタミンA過剰投与実験を行った。具体的には、ビタミンAの濃度を段階的に投与し、また耳介発生のステージと照らし合わせた投与時期を模索した。最終的に、小耳症を発症するビタミンA適正量および適正投与時期を決定した。その結果、マウス新生仔の小耳症モデルを作成する事に成功した。 しかし新生仔が出産から24h以上生存せず、すべて死に至る事から、生後7日までの耳介挙上観察は不可能であった。その為、当初計画していた画像ライブラリ作成はせずに、そ母体内では胎仔マウスが成長を続ける事から、新生仔ではなく胎仔マウスのサンプル化を行った。また摘出したサンプルより、DNA/RNA抽出の最適化を行い、現在解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ビタミンAが及ぼす胎仔マウスへの影響は、小耳症だけに限らず、死に至る症状も併発する事が明らかとなった。生後に発達する耳介形成の観察が困難であることから、引き続き胎仔を摘出し、サンプル化を行う予定である。また、サンプルよりDNA/RNA抽出を行い、母体内における耳介発生に関連する遺伝子に特化し調べる事で、耳介発生を阻害する原因遺伝子を突き止めたいと考えている。 その他、本年度は理化学研究所のJafar博士を訪問し、これまでの研究結果や今後必要な実験および解析方法などについてディスカッションを行う。また、結果がまとまり次第、学会にて発表する予定である。
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