2013 Fiscal Year Research-status Report
発達期の概日リズムの乱れは成長後の栄養代謝に影響を与えるか?
Project/Area Number |
25860910
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
澤田 直樹 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (50452644)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | DOHaD / 概日リズム / 肥満 / レプチン |
Research Abstract |
本研究は、発達期の概日リズムの乱れが成長後の栄養代謝に与える影響を明らかにすることを目的とする。平成25年度は、母仔分離および恒常明により概日リズム攪乱モデルラットを作製し、その内的脱同調と脂肪蓄積について解析を行った。 母仔分離実験は、母獣との同居を明期のみ行うL群、暗期のみ行うD群を作製し、7日齢から母仔分離を開始し21日齢で離乳後は自由摂食とした。母仔分離開始後の仔ラットの体重は、D群よりもL群で増加したが、離乳後の8週齢以降は有意差がなくなった。10週および21週齢において体重あたりの精巣上体脂肪および後腹壁脂肪の量はD群よりもL群で増加していた。母仔分離中の仔ラットにおける大脳皮質および肝臓における時計遺伝子の発現リズムは、L群で乱れていたがD群では正常であった。成長後はL群における時計遺伝子の発現リズムの乱れは消失したが、精巣上体脂肪におけるレプチンの発現リズムはD群では正常であったのに対し、L群では逆転していた。14~17週齢において高脂肪食を与えた結果、高脂肪食に変更後1日目の摂餌量はD群に比較してL群で有意に多く、2日目以降は差が消失した。体重あたりの後腹壁脂肪および精巣上体脂肪の量について、母仔分離と高脂肪食負荷との相関関係は見られなかった。 以上の結果は、発達期の概日リズムの乱れが、時計遺伝子のリズムとは別の経路で成長後の栄養代謝の概日リズムの乱れとして残ること、また脂肪蓄積に影響を与える可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は研究計画に従い、母仔分離および恒常明での飼育による発達期概日リズム攪乱モデルラットの作製と内的脱同調の解析を行った。 母獣との同居を明期12時間のみとしたL群、暗期12時間のみとしたD群を作製し、L群の大脳皮質および肝臓で時計遺伝子の発現リズムが乱れていることを確認した。一方でD群は正常と同様のリズムを刻んでいたことから対照群として用いた。L群はD群よりも成長後の体重あたりの精巣上体脂肪および後腹壁脂肪の量が増加していた。成長後はL群で見られた時計遺伝子の発現リズムの乱れは消失したが、精巣上体脂肪におけるレプチンの発現リズムは正常またはD群と逆転していた。 恒常明実験では、出生時から明暗周期の無い照明下で飼育した仔ラットを作製し、通常は24時間ごとに見られる一過性の体温低下がランダムなタイミングで生じていることを明らかにした。哺乳期および離乳後の体重増加は明暗周期のある条件で飼育した仔ラットと同様であった。 母仔分離実験の成果について先天異常学会第53回学術集会の演題に登録した結果、DOHaD(Developmental Origin of Health and Disease)シンポジウムに選出され、口頭発表を行った。また、日本解剖学会第68回中国・四国支部学術集会において、口頭発表を行った。 発達期の概日リズムの乱れが成長後の栄養代謝に与える影響として、成長後のレプチンの遺伝子発現リズムが反転していたこと、さらに脂肪蓄積量が増加することを明らかにしたことから、研究計画が概ね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は研究計画に従い、代謝関連臓器における遺伝子発現解析を行う。平成25年度に実施した研究において脂肪蓄積に差が見られた母仔分離による概日リズム攪乱モデルを用いて、成長後の栄養代謝系への影響をより詳細に解析する。前年度と同様にラットを作製し、8~10週齢において経時的に尾静脈から採血し、血清中のレプチン、コルチコステロン、アドレナリン等の栄養代謝に関わるホルモンの濃度変化の概日リズムを解析する。次に、麻酔下で解剖し、精巣上体・後腹壁脂肪、および脳を採取する。各脂肪組織のうち、レプチンの遺伝子発現リズムの変化が大きかった組織について、マイクロアレイ解析を行い、各群間で発現変化が見られる遺伝子およびシグナルを同定する。抽出した遺伝子については、リアルタイムPCRを用いて複数のサンプルについて発現量の変化の確認を行う。脳は、一部はレプチン受容体、neuropeptide Y等の摂食に関わる遺伝子の発現量を解析するとともに、それ以外は灌流固定し、免疫染色またはin situ hybridizationにより解析し、発現分布を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年3月納品となり支払いが完了していないため、次年度使用額が生じた。 平成26年度4月に支払い完了予定である。
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Research Products
(2 results)