2013 Fiscal Year Research-status Report
宮古島に多発するカポジ肉腫とHHV8潜在感染率の疫学的調査と輸血の安全性について
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25860961
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
林 健太郎 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (50631991)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カポシ肉腫 / ヒトヘルペス8型ウイルス / HHV8 / 宮古島 / 血管肉腫 / ウイルス発癌 |
Research Abstract |
国内ではきわめて稀な脈管腫瘍である古典型カポジ肉腫が、沖縄県・特に人口5.5万人の宮古島においては非常に高率に発症している。 本研究課題は、沖縄県・宮古島におけるカポジ肉腫の極めて高い発症頻度の理由を明らかにするのが一義的な目的である。カポジ肉腫は、古典型、アフリカ型、エイズ関連型、免疫抑制型の4病型に分けられる稀な脈管系腫瘍である。最近の日本国内ではカポジ肉腫の大部分がエイズ関連型であるが、沖縄県、特に宮古島においては古典型のカポジ肉腫の発生が、他地域と比較して極めて多い。 この宮古島におけるカポジ肉腫症例の豊富さが、HHV-8の潜在感染率の高さのみに起因するのか、あるいは、さらに別の発症素因が存在するのかについては、未だ正確な疫学上のデータや結論が出ていない。 第一に、カポジ肉腫の直接的な病原体であるとされるヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)の感染率を調べることで、宮古島のカポジ肉腫の高発症率が、HHV-8ウイルスの潜在感染率の高さのみに起因するのか、民族の違いや他のウイルスの関与などの複数の発症因子の関与も存在するのかを探るとともに、輸血によるHHV-8の感染の可能性、さらには当地でのカポジ肉腫の発症伝搬に関わる公衆衛生学的な問題点を整理し解決すべき研究課題である。 そこで沖縄県、特に宮古島におけるHHV-8感染率を、日本本土や他国と比較できる方法で調査する必要があると考える。沖縄、特に宮古島で感染率が特に高いという結果が出れば、カポジ肉腫の発生率は高い感染率に直接的に起因すると結論つけられる。あるいは、もし沖縄、特に宮古島における感染率が日本本土と相違ないものであれば、当地でのカポジ肉腫の発症率の高さは民族的な違い、HHV-8に対する宿主の免疫応答やHHV-8ウイルス以外の複合感染などの可能性も示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宮古島には皮膚科医が常勤する病院は存在せず、カポジ肉腫などは琉球大学より週1回で医師が派遣される県立宮古病院で、外来診療・初期治療を行う。 そこで、琉球大学医学部の倫理委員会により承認された上で、県立宮古病院へ協力を要請し、特定の月に受診した全ての患者の採血サンプルの余剰血清を集め、HHV8の感染率をELISA法により測定する。 昨年度は倫理委員会での承認後に、県立宮古病院においても承認を得て、1000検体以上の血清を集め凍結保存した。 さらに、各種の抗HHV8抗体の中で、どの抗体を使用したELISAシステムが最も敏感で、さらに特異性が高いかを、琉球大学に通院中のカポシ肉腫患者の10数名の血清を用いて検討したところ、国立感染研究所の片野晴隆博士の作製したHHV8に対する血清ELISAシステムが良好な感度を示した。 さらにHHV-8感染培養細胞株(BJAB細胞など)を用いた蛍光抗体法により、その感度と特異度を片野晴隆博士のELISA法による測定との違いを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
全検体におけるHHV-8血清保有率の測定を継続する。 具体的な検査方法としては、片野博士が作製したK8.1, ORF59, 65, LANAリコンビナントタンパクを混合抗原としたELISAによる測定と、HHV-8持続感染株であるBCBL-cell lineを利用したIFA法により、順次、カポシ肉腫患者と宮古島通院採血サンプルでの抗体価を測定する。 性別、年齢、地域などの被験者情報と検査結果を統計学的に解析する。また沖縄県、宮古島の血清抗体陽性率と、これまでのカポジ肉腫発症数を比較して検討する。 さらに、カポシ肉腫患者の腫瘍組織中に存在するHHV8ウイルス遺伝子を、PCR増幅後に、次世代シークエンサーで一括しそのウイルス遺伝子配列を決定することで、宮古島カポシ肉腫患者に共通して存在するウイルス遺伝子変異の可能性を網羅的に、複数のカポシ肉腫患者において探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内ではきわめて稀な脈管腫瘍である古典型カポジ肉腫が、沖縄県・特に人口5.5万人の宮古島においては非常に高率に発症する。 本研究課題は、沖縄県・宮古島におけるカポジ肉腫の極めて高い発症頻度の理由を明らかにするのが一義的な目的である。カポジ肉腫の直接的な病原体であるとされるヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)の感染率を調べることで、宮古島のカポジ肉腫の高発症率が、HHV-8ウイルスの潜在感染率の高さのみに起因するのか、民族の違いや他のウイルスの関与などの複数の発症因子の関与も存在するのかを探る。このため、琉球大学附属病院のみならず、宮古島の基幹病院である県立宮古病院での採血検体の残余分を匿名で、HHVウイルスの抗体価の測定に使用するための倫理委員会での承認に時間が掛かり、平成25年度中には実際の大規模スクリーニングを開始するには至らなかった。 昨年度の後半に琉球大学附属病院と県立宮古病院での倫理委員会承認を得て、採血検体の残余分1000検体以上を確保し冷凍保存した。少数でのELISA検査を開始しており、今年度は全検体におけるHHV-8血清保有率の測定を継続する。さらに、カポシ肉腫患者の腫瘍組織中に存在するHHV8ウイルス遺伝子を、PCR増幅後に、次世代シークエンサーで一括しそのウイルス遺伝子配列を決定することで、宮古島カポシ肉腫患者に共通して存在するウイルス遺伝子変異の可能性を網羅的に、複数のカポシ肉腫患者において探索する。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 先天性異所爪の1例2013
Author(s)
﨑枝薫、粟澤剛、林健太郎、苅谷嘉之 他
Organizer
日本皮膚科学会第67回沖縄地方会
Place of Presentation
沖縄県那覇市
Year and Date
20130713-20130714
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