2013 Fiscal Year Research-status Report
菌状息肉症モデルマウスの作製と表皮浸潤・転移機構の解析
Project/Area Number |
25860967
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
福田 桂太郎 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (60464848)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 皮膚T細胞リンパ腫 / Pautrier微小膿瘍 / 表皮向性 / 表皮抗原認識 |
Research Abstract |
皮膚T 細胞リンパ腫の菌状息肉症(MF)では、真皮表皮境界部に帯状リンパ球浸潤と液状変性からなるinterface dermatitis(ID)、表皮内にMF細胞(CD4陽性)の集簇であるPautrier 微小膿瘍を認める。我々は表皮に発現するデスモグレイン3(Dsg3)を特異的に認識するTCR のα鎖・β鎖(H1α, H1β)のレトロウィルスベクターをCD4 陽性T 細胞に導入、Rag2-/-マウスに移植することで、ID をきたすマウスの作製に成功、報告した。MFはINK4a/ARF 遺伝子の不活性化が高率に認められることから、INK4a/ARF-/-マウスのCD4 陽性T 細胞を分取し、H1α, H1βを導入、Rag2-/-マウスに移植したところ、8 週後に病理組織で、口囲や耳の表皮にPautrier 微小膿瘍に酷似した像を認めるマウスを作製することができた。 続いて、遺伝子導入効率を高める、TCRのα鎖とβ鎖を同量発現させる、遺伝子導入が成功した細胞がGFP 陽性となり、FACSや免疫染色で検出できるようにする目的で、H1α,H1βとGFPとの間にP2A配列を挿入したレトロウィルスベクター(H1-GFP)を構築した。現在、INK4a/ARF-/-のCD4 陽性T 細胞にH1-GFPベクターを導入、Rag2-/-マウスに移植することで、MFマウスが作製できるか解析中である。またPautrier 微小膿瘍の形成におけるMF 細胞の表皮抗原認識の重要性を評価すべく、Dsg3特異的なTCRを持たないMock-GFPも同様にINK4a/ARF-/-のCD4陽性T細胞に導入、Rag2-/-マウスに移植し、解析した。移植2週、4週後のマウスの表皮に存在するH1-GFP, Mock-GFP陽性細胞数に差はなく、CD4陽性T細胞の表皮向性に表皮抗原認識は関与しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
達成度が遅れている要因として2点が挙げられる。1点目は、INK4a/ARF-/-マウスを安定して確保することが当初困難であったことである。大量に繁殖させることで、半年後から数も増え、現在は安定して研究できる数になった。もう1つの問題点としては、当初、H1α,H1βの2つのベクターをINK4a/ARF-/-CD4陽性T細胞に移植すると、共に陽性である細胞は10%強であり、さらに片方のベクターのみが導入された細胞を除去するため、MoFloでソーティングすると、INK4a/ARF-/-CD4陽性T細胞の内、移植できるのは3%程度まで減少し、1回の実験で移植することのできるRag2-/-マウスも少なかったことである。そこで、H1α,H1β、そしてGFPのDNA配列の間にP2A配列を挿入した1つのレトロウィルスベクターを作製した。これにより、1つのベクターの導入であることから遺伝子導入高率は2倍に上がり、片方のベクターが入ってしまうためにソートする必要がなくなった。またP2A配列を入れたことで、TCRのα鎖とβ鎖の同量発現が可能となったため、片方の余剰なTCR鎖が抗原との結合を阻害する可能性がなくなった。現在、以前の5~10倍ほど移植することが可能となり、実験速度が向上してきている。
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Strategy for Future Research Activity |
【1】 MF モデルマウスのcell of origin の解析 MF モデルマウスの皮膚を採取し、トリプシン処理をして表皮と真皮に分離した後、表皮をsingle cell に分離してFACS 解析を行う。表皮に浸潤したGFP 陽性のMF 細胞がヒト同様、CLA 陽性、CCR4陽性、CCR7 陰性、L-selectin 陰性のEffector memory T cell(TEM)のphenotype を呈するか解析する。 【2】 Pautrier 微小膿瘍の形成におけるMF 細胞の表皮抗原認識の重要性についての検証 ランゲルハンス細胞に近接する形でPautrier 微小膿瘍が認められるため、MF 細胞はランゲルハンス細胞によって提示された表皮抗原を認識することで増殖が促され、その結果Pautrier 微小膿瘍が形成されると、皮膚病理学の分野では長年考えられてきた。その仮説を検証するため、移植2週、4週後だけでなく、6週、8週間後で、表皮に浸潤するH1-GFP陽性CD4陽性T細胞とMock-GFP陽性CD4陽性細胞数および、病理所見に差が認められるか確認する。 また、Human Langerin-DTA Rag2-/-マウスにDTAを投与し、ランゲルハンス細胞を消失させた状態で、H1-GFP陽性CD4陽性T細胞を移植すると、Pautrier微小膿瘍の形成が認められなくなるか、あるいは、Pautrier微小膿瘍が形成された後に、DTAを投与することで、Pautrier微小膿瘍が減少するか確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品を主体に研究費を施行しており,研究室で所有していた試薬を使用したことで研究費を節約できたためと考えられる。 当初の予定通り,消耗品費を中心に使用する予定である。今後は,フローサイトメトリー用の抗体やマウスに関連する費用などで増加すると予想される。
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