2013 Fiscal Year Research-status Report
神経オシレーションを用いた統合失調症の情報処理メカニズムの解析
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25860990
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
切原 賢治 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80553700)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経オシレーション / ミスマッチ陰性電位 / 脳波 / 統合失調症 / 臨床病期 |
Research Abstract |
平成25年度は健常者および統合失調症のハイリスク、初発期、慢性期にある患者を対象に聴覚オッドボール課題を行い、その間の脳波を測定した。本研究は東京大学医学部倫理委員会の承認を得ており、全ての被験者に対して文書にて研究の説明を行い、文書にて同意を得た。神経オシレーションの解析をする前に、事象関連電位の解析を行った。これまでに健常者22名、At-Risk Mental State(ARMS)被験者21名、初発統合失調症患者20名で解析が終了している。 本研究では聴覚オッドボール課題として持続時間(duration)を逸脱させた課題と周波数(frequency)を逸脱させた課題を行った。事象関連電位成分としてミスマッチ陰性電位(Mismatch negativity; MMN)とP3aを計測した。統計解析を行った結果、duration MMNはARMS群と初発統合失調症群でともに健常対照群よりも振幅が低下していた。Frequency MMNは健常対照群、ARMS群、初発統合失調症群の間に差を認めなかった。Duration P3aとfrequency P3aはARMS群と初発統合失調症群でともに健常対照群よりも振幅が低下していた。これらの結果から、統合失調症のハイリスクおよび初発期の段階ですでに、健常者と比較して脳波の反応に違いがあることを認めた。本研究の結果は学術論文として発表した(Nagai et al., Schizophr Res, 2013)。また、MMNの意義について文献調査を行い、結果を学術論文として発表した(Nagai et al., Front Psychiatry, 2013)。 今後は、神経オシレーションについて解析を行い、情報処理メカニズムを調べる。それとともに、臨床症状や社会機能との関連も調べる。また、1年後にも再検査を行い、縦断的変化についても調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成25年度は健常者および統合失調症のハイリスク、初発期、慢性期の4群で神経オシレーションを比較する横断研究を行う予定であった。平成26年度は、平成25年度に行った横断研究の解析を進めて、神経オシレーションの臨床病期における変化および認知機能、臨床症状、社会機能との関連を調べる予定であった。さらに、健常者および統合失調症のハイリスクと初発期を対象に1年後に再検査し、縦断的変化を調べる予定であった。 現在までに、健常者および統合失調症のハイリスク、初発期、慢性期の4群で聴覚オッドボール課題を行っている間の脳波を測定した。そのうち健常者22名、At-Risk Mental State(ARMS)被験者21名、初発統合失調症患者20名については事象関連電位の解析が終了している。そのため、平成25年度に関しては、健常者および統合失調症のハイリスク、初発期、慢性期の4群で神経オシレーションを比較する横断研究を行うという当初の計画通りに進展している。 一方、神経オシレーションの解析については現在行っているところであり、神経オシレーションの臨床病期における変化および認知機能、臨床症状、社会機能との関連については明らかにされていない。また、1年後に再検査して縦断的変化を調べる研究については、現在データ収集中である。平成26年度の計画はまだ達成できていないことから、当初の計画以上に進展しているとは言えない。 以上の点から、統合失調症の発病前後における神経オシレーションの異常をcross-frequency couplingも含めて明らかにするという当初の目的に対して、これまでのところおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
健常者および統合失調症のハイリスク、初発期、慢性期の4群で神経オシレーションを比較する横断研究については、聴覚オッドボール課題を行っている間の脳波を測定して、事象関連電位について解析することまでは終了している。現在は神経オシレーションの解析をしているところであるが、現時点では解析がまだ終了していない。効率的に解析するプログラムを作成するなどして対応し、平成26年度中には解析を終了する。今後は神経オシレーションの解析を進めるとともに、神経オシレーションと認知機能、臨床症状、社会機能との関連についても解析していく予定である。 健常者および統合失調症のハイリスクと初発期を対象に1年後に再検査して縦断的変化を調べる研究については、現在データ収集中である。今後は統計解析を行うために必要な数の脳波や臨床情報を収集し、得られた脳波について事象関連電位および神経オシレーションの解析を行い、神経オシレーションの経時的な変化を調べる予定である。それとともに、神経オシレーションが将来の発病や社会機能を予測するか、また、神経オシレーションの変化が認知機能、臨床症状、社会機能の変化を反映するかについて統計解析を行う。 これまでに研究はおおむね順調に進展しており、研究計画の変更は現時点では考えていない。縦断研究のデータ収集が今後の課題になりうるが、被験者に理解を得て1年後の再検査を行い、脳波や臨床情報の収集に努めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脳波の電極など脳波測定に伴う消耗品について購入を予定していた。これらは使用を繰り返すうちに劣化していくものであるが、当初想定していたよりも劣化が進まず、今年度中に購入する必要がなかった。また、研究代表者は健常者および統合失調症のハイリスク、初発期、慢性期で事象関連電位を比較する横断研究について他の研究助成を受けており、脳波や臨床情報の収集や事象関連電位の解析に必要な経費については他の研究助成からも使用したため、次年度使用額が生じた。 平成26年度は神経オシレーションの解析および縦断研究を行う。脳波の電極など脳波測定に伴う消耗品は、平成26年度中には消耗が進み購入する必要が生じる。また、神経オシレーションの詳細な解析に際してデータ解析用のソフトウェアが必要になる。データが集まったところで各種統計解析を行うが、統計解析用のソフトウェアも必要になる。得られた結果を学会や論文で発表するに当たり、旅費や投稿費用が必要になる。これらの経費に対して本研究助成を使用する。
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Research Products
(5 results)