2014 Fiscal Year Research-status Report
神経オシレーションを用いた統合失調症の情報処理メカニズムの解析
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25860990
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
切原 賢治 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80553700)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経オシレーション / ミスマッチ陰性電位 / 脳波 / 統合失調症 / 臨床病期 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度も、昨年度と同様に健常者および統合失調症のハイリスク、初発期、慢性期にある患者を対象に聴覚オッドボール課題を行い、その間の脳波を測定した。本研究は東京大学医学部倫理委員会の承認を得ており、全ての被験者に対して文書で説明を行い、文書にて同意を得た。 昨年度は横断研究を行い、事象関連電位の一つであるミスマッチ陰性電位(Mismatch negativity: MMN)を調べた。聴覚オッドボール課題として持続時間(duration)を逸脱させた課題と周波数(frequency)を逸脱させた課題を行った。MMNのうち、duration MMNは統合失調症の初回エピソード群およびハイリスク群で健常対照群と比べて振幅減衰していた。一方、frequency MMNは統合失調症の初回エピソード群およびハイリスク群で健常対照群と有意な差を認めなかった。このことから、duration MMNは統合失調症の早期より減衰しているのに対し、frequency MMNは発病後に減衰することが示唆された。しかし、これを検証するためには縦断研究が必要である。本年度は、初回と1年後の2回脳波を測定した被験者を対象に、MMNの縦断変化を調べた。その結果、duration MMNは健常対照群および統合失調症の初回エピソード群とハイリスク群において、初回と1年後でほとんど変化しなかった。一方、frequency MMNは健常対照群よりもハイリスク群で、ハイリスク群よりも初回エピソード群で1年後に振幅減衰が大きい傾向にあった。しかし、被験者数が少なく統計学的検定で有意には至らなかった。 今年度は横断研究における神経オシレーションの解析も行った。その結果、統合失調症群と健常対照群とでcross-frequency couplingのパターンが異なることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、平成25年度は健常者および統合失調症のハイリスク、初発期、慢性期の4群で神経オシレーションを比較する横断研究を行う予定であった。平成26年度は、平成25年度に行った横断研究の解析を進めて、神経オシレーションの臨床病期における変化および認知機能、臨床症状、社会機能との関連を調べる予定であった。さらに、健常者および統合失調症のハイリスクと初発期を対象に1年後に再検査し、縦断変化を調べる予定であった。 横断研究では、MMNについては臨床病期における変化および認知機能、臨床症状、社会機能との関連を調べて論文や学会での報告を行った。MMNの横断研究については予定通り進展している。神経オシレーションについては臨床病期における変化および認知機能、臨床症状、社会機能との関連を調べた。予備的な解析はすでに終了したが、まだ全ての解析は終わっておらず、結果は確定していない。そのため、神経オシレーションの横断研究についてはやや遅れている。 縦断研究では、MMNについては1年後に再検査し、縦断変化を調べる研究を行っているところである。すでに予備的な結果も得ているが、まだ被験者数が十分ではなく、結果は確定していない。そのため、MMNの縦断研究についてはやや遅れている。神経オシレーションについては、1年後に再検査したデータはあるものの、横断研究がまだ終了しておらず、横断研究の結果を参考に解析を進める予定である縦断研究はまだ予備的な結果も得ていない。そのため、神経オシレーションの縦断研究については遅れている。 以上の研究の進捗状況を総合すると、全体としてやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
健常者および統合失調症のハイリスク、初発期、慢性期の4群で神経オシレーションを比較する横断研究については、聴覚オッドボールを行っている間の脳波を測定して、MMNを解析し、臨床病期における変化および認知機能、臨床症状、社会機能との関連を調べるところまで終了している。神経オシレーションについても解析を進めており、臨床病期における変化および認知機能、臨床症状、社会機能との関連を調べるところまで進めているが、まだ予備的な段階であり、結果は確定していない。予備的解析にて注目すべき周波数などいくつかの条件が決まったため、効率的に解析を進めるプログラムを作成し、平成27年度中には結果が確定できるように研究を進めていく。 健常者および統合失調症のハイリスクと初発期を対象に1年後に再検査して縦断的変化を調べる研究については、現在までにある程度の脳波データを収集したが、まだ十分ではない。今後はより積極的な被験者リクルートを行い、平成27年度中には十分なデータを収集できるように努める。MMNについては現存のデータですでに解析済みであり、新たに収集したデータについても速やかに解析を行う。神経オシレーションについては、まず横断研究により解析の方向性を定める必要があるため、縦断的変化の解析には至っていない。横断研究ではすでに予備的な結果が得られているため、速やかに確定させるとともに、得られた結果を縦断研究にも応用し、平成27年度中に結果を確定できるよう研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
脳波計が老朽化したため研究期間中に脳波の新規購入が必要となった。また、脳波測定室も老朽化しており、脳波計を新たな脳波測定室に設置した他、実験に必要な刺激提示装置の移動も必要になった。これらの影響で研究が遅れたため、消耗品の購入や得られた結果の発表などに要する費用が予定よりも少なくなり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現時点で予備的な結果は出ているが、縦断研究ではまだ被験者数が十分でないため、被験者を増やしてその結果を確認する。研究継続に伴う消耗品の購入などに研究費を使用する。解析についてもまだ全て終えていない。効率的にデータ処理を行うために必要な物品の購入などに研究費を使用する。研究により得られた結果を学会や論文で発表するが、その際に必要な費用として研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)