2015 Fiscal Year Annual Research Report
発達依存的に発現応答を示す遺伝子に関する精神疾患発症年齢に着目した死後脳解析
Project/Area Number |
25860991
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
上里 彰仁 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90547449)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 死後脳 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症や気分障害などの精神疾患の発症が思春期以後である事実から、発症には症状発現に関連する神経回路の成熟が必要であると考えられる。ラットを用いた動物実験では、ある臨界期以前にNMDA受容体遮断薬であるフェンサイクリジン(PCP)を投与しても行動異常を惹起せず、臨界期以後にPCPを投与した場合、hyperlocomotion, stereptypyなどの統合失調症様症状を惹起する。このときラット脳内では、臨界期前のPCP投与では発現応答しない一方、臨界期以後のPCP投与には発現応答する遺伝子群が存在し、これらが異常行動に関連していることが予想されると同時に、精神疾患の発達依存的な発症様式に関連していると考えられる。我々はこれらの遺伝子を複数同定し、発達依存的リスク遺伝子として位置づけた。発達依存的リスク遺伝子は、グルタミン酸受容体複合体を構成する分子や、軸索骨格に関連する分子、内皮細胞の接着を促進する分子などが含まれ、発達臨界期で成熟すると想定される神経回路への関与を予想させた。 発達依存的リスク遺伝子であるSAP97について、新規スプライシングバリアントを同定した。このバリアントに関して、統合失調症患者および双極性障害患者の死後脳を用いてmRNA発現をqRT-PCRにより定量解析したところ、18歳未満発症の早期発症統合失調症において発現低下を認めた。SNPの違いにより新規バリアントと従来バリアントの発現が大きく左右されることを見出した。本遺伝子は発達依存的にPCPに対して発現応答する遺伝子として同定されたものであるという事実を考慮すると、統合失調症の特徴的な病態である発達依存性に本遺伝子が関わることが示唆されると同時に、我々が用いたリスク遺伝子の絞り込み方が有用であることが示された。
|