2013 Fiscal Year Research-status Report
ストレスがIL-1βを放出させる機序の解明:うつ病治療の新たなターゲットを探して
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25861006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岩田 正明 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (40346367)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | うつ病 / 炎症 / アストロサイト / マイクログリア / ATP / グルタミン酸 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
ストレス状況下では脳内でATPが放出され、ATPはマイクログリアに危険信号として感知されて炎症促進性物質を放出し、細胞障害およびうつ病様の行動を呈することをこれまで明らかにしてきた。本研究ではATPがどのようにしてストレスにより放出されるのか、ATPの放出源の同定とその制御を目的としている。これまでの研究によりストレスはATPと同時に興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸も放出することが分かっている。グルタミン酸はシナプスにおいてアストロサイトによって取り込まれることが知られており、またアストロサイトはグリオトランスミッターとしてATPを利用することから、アストロサイトがATPの放出源との仮説を立て研究を進めている。平成25年度はまずマイクロダイアリシス法を用いて、アストロサイトの機能を薬理学的に制御しながら放出されるATP等を測定する計画を立てていた。しかし実験動物保護の観点、また研究スピード促進の観点から、まずこれらの現象をin vitroで観察し、その結果を元に動物レベルで検証するという方針に計画を変更した。平成25年度はC6グリオーマ細胞および初代アストロサイトの培養系を確立し、そこへグルタミン酸を投与したところ、ATPの上昇が確認された。また現在、アストロサイトの機能を薬理学的に抑制することで、グルタミン酸反応性のATP放出が抑制されるか確認しているところである。これらが確認された後、実験動物に応用し、アストロサイト機能抑制下でストレスによるATPの放出が抑制されるかどうか確認する。また心的なストレスを簡便に測定する方法として末梢コルチゾールがある。この度、グルタミン酸放出抑制剤であるリルゾールをラットに投与したところ、ストレスによるコルチゾールの上昇が抑制されたことから、個体レベルにおいても過剰なグルタミン酸の関与がストレス源となる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では実験動物を用いてマイクロダイアリシス実験を行う予定であった。しかし細胞を用いた研究にて、生体内で起こると予想される現象が確認できたことから、今後スムーズにin vivo研究に移行できることが期待される。また当初は初年度の計画に組み込まれていなかったATPの制御機構について、未だ実験動物を用いてATPを測定することはできていないものの、コルチゾールという指標を用いてその成果を確認することができた。以上のことから総じて研究は概ね順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、先のin vitroで証明されたことをマイクロダイアリシス法を用いてin vivoで検証する。マイクロダイアリシス法は既に平成25年度にセットアップされている。これを用い、ストレス状況下におけるグルタミン酸濃度およびATP濃度の変化と、グルタミン酸放出抑制剤(リルゾール)投与下でのそれぞれの変化、またアストロサイト機能抑制剤(フルオロ酢酸)でのATPの変化を測定する。さらにIL-1β、IL-6、TNFαといったサイトカインについては微量であり当教室では測定が困難であるため、Lundbeck社と共同して行うことを計画している。また同様の条件下での行動解析を当教室およびYale Universityとで共同で行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定よりも物品が安く購入できたため。 平成26年度は、すでにマイクロダイアリシスのシステムが構築されていることから、助成金はプローブや試薬などの消耗品の購入に使用する。
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