2014 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスがIL-1βを放出させる機序の解明:うつ病治療の新たなターゲットを探して
Project/Area Number |
25861006
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岩田 正明 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (40346367)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | うつ病 / ストレス / 炎症 / IL-1beta / NLRP3 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ストレスがどのようにして脳内でIL-1betaをはじめとする炎症性物質を産生させるのか、その機序の解明と新たな治療戦略の構築を目的としている。 ストレスはうつ病発症の重要なリスク因子であり、動物においてストレスは脳神経を萎縮させ、神経新生を抑制することでうつ状態を誘発することが知られる。我々はこれまでに (i) ストレスが脳内で過剰なグルタミン酸を放出させること、また (ii) それに引き続くATP の誘導を介して (iii) NLRP3(細胞内受容体)が活性化されることで炎症性サイトカイン(interleukin-1beta 等)が脳内で産生され(脳内炎症)、(iv) 神経新生の抑制を生じる結果 (v) うつ状態を引き起こす、ことを明らかにしてきた。 興味深いことに、NLRP3は身体の様々な物質、例えばグルコースやアミロイドbetaなども感知し、IL-1betaの放出をはじめとした炎症を引き起こし糖尿病やアルツハイマー病等の身体疾患を増悪させる。糖尿病やアルツハイマー病はうつ病と高率に併存する疾患であり、従ってNLRP3がストレスや生体内危険物質(誘発因子)と、うつ病や身体疾患(疾病)を結びつける共通因子ではないかという、「NLRP3インフラマソーム仮説」を我々は提唱した(Brain Behav Immun, 2013)。 このようにNLRP3が過剰に活性化されることで様々な疾患を呈する可能性が考えられることから、現在NLRP3を直接制御する薬剤の効果と安全性を検討している。ごく最近NLRP3の活性化阻害剤であることが示されたbeta hydroxybutyrate(BHB)を用いて調べた結果、BHB投与群は有意に抗うつ効果が見られることが分かった。またグルタミン酸の放出抑制剤であるリルゾールもまたストレス誘発性のコルチゾールの上昇を抑えることができた。 現在、引き続きうつ病の新たな治療法の確立に取り組んでいる。
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