2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25861027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
鹿内 浩樹 北海道医療大学, 薬学部, 助教 (00632556)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 精神医学 / 神経薬理学 / 行動薬理学 / 神経科学 / 不安障害 / 社交性不安障害 / セロトニン / 5-HT1A受容体 |
Research Abstract |
本研究は、社会的敗北ストレス負荷により作製される不安障害モデル動物を用いて、その行動変容の根底に存在する不安障害を発症させる脳内神経基盤を、組織形態学的および電気生理学的解析により細胞レベルで解明することを目的とするものである。 不安や恐怖に関連した精神疾患の病態モデルを、ラットやマウスなどのげっ歯類を用いて作製するに当たっては、古くから足蹠刺激や強制拘束など、様々なストレス負荷が用いられてきた。しかしこれをヒトに置き換えて解釈・考察する場合、日常生活では経験することのない非現実的なストレスであった。本研究で用いる「社会的敗北ストレス」は、我々ヒトが日常生活を営む上で、十分に経験しうるストレスである 。すなわち、実験で得られた結果をヒトに外挿して考察する際に、延長線上にヒトの疾患病態生理解明を視野に入れることができる妥当性の高い研究になり、ストレス社会と揶揄される現代において本研究は、近年増加しつつある「不安障害の発症メカニズムの解明」という時代的要求に応えるものである。 平成25年度の研究は、マウスに社会的敗北ストレスを負荷することで不安障害モデル動物の作製を試み、その妥当性を種々の行動薬理学的手法により検討することを目標として実施された。その結果、気分障害(うつ病)様の性質を含まず、不安障害様行動のみを示す疾患モデル動物を作製することに成功した。この成果により、作製された疾患モデル動物を用いて平成26年度実施予定である実験(皮質辺縁系における不安障害の病態生理の解明)を遂行することが可能となった。具体的には、扁桃体を中心とした情動調節機能を有する神経細胞の形態学的および機能的異常を、組織形態学的手法ならびに電気生理学的手法を用いて多角的に解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は、行動薬理学的妥当性の検討による不安障害モデル動物の確立であった。実験計画段階では、いくつかの先行研究に従って社会的敗北ストレスをBALB/cマウスに負荷することにより疾患モデル動物の作製を目指す予定であった。しかし、先行研究との微妙な飼育環境の違いやaggressorであるICRマウスの攻撃性の違いが原因としてか、先行研究が完全には再現されなかった。そこで、defeatマウスをBALB/cマウスからC57BL/6Nマウスに変更して同様の実験を試みた。その結果、気分障害(抑うつ)の性質を含まず、不安障害様行動のみを示す動物の作製に成功した。すなわち、不安障害モデル動物を作製し、その妥当性を多角的な行動薬理学的解析により検証することができた。 さらに、抗不安効果があるとされるセロトニン5-HT1A受容体作動薬8-OH DPATを単回投与し、その効果をsocial avoidance testにより検証した。その結果、対照群では用量依存的に抗不安効果が認められたのに対し、疾患モデル動物では5-HT1A受容体刺激による抗不安効果は認められなかった。すなわち、不安障害モデル動物には5-HT1A受容体に何らかの異常が生じていることが強く推察された。 以上のように、若干の実験計画変更があったものの、変更・追加された計画は順調に進行していることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究で不安障害モデル動物の作製を確立させたため、当初の計画通り、平成26年度は「皮質辺縁系における不安障害の病態生理の解明」を遂行する。具体的には、急性脳スライスを用いたパッチクランプ法により、情動に関与する脳部位の神経細胞を可視化し形態学的な解析を行う。また同時に、膜抵抗値・発火頻度などの細胞特性の解析や興奮性シナプス後電流(EPSC)や抑制性シナプス後電流(IPSC)を解析することにより、5-HT1A受容体の機能的変化を電気生理学的に解析する予定である。 この研究が順調に進めば、疾患モデル動物に様々な不安障害治療薬を投与し、5-HT1A受容体の機能異常が改善されるか否かについても検証する。これは治療薬の作用機序を細胞レベルで明らかにするとともに、新規治療ターゲットのシーズとなることが期待されるものである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月末に開催された学会(第87回日本薬理学会、仙台開催済)の参加に際して、年度末であったため支出が平成25年度内に間に合わず翌年度に持ち越した。 平成25年度未使用額(72,324円)となっている分に関しては、平成26年度に旅費(第87回日本薬理学会、仙台開催済み)として使用する予定である。
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