2016 Fiscal Year Annual Research Report
Neurobiological signatures of autism spectrum disorder
Project/Area Number |
25861030
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山縣 文 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30439476)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 広汎性発達障害 / 脳画像研究 / MRI / 兄弟 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人の自閉症スペクトラム障害(ASD)患者とその非罹患同胞ペアと健常兄弟ペアを比較して、ASDの兄弟間において共通してみられる脳異常を抽出し、ASDの遺伝的マーカーを検出することが今研究の目的である。本研究の4年間の実施期間のなかで、現時点までに計54名の被験者の脳画像データ(安静時fMRI、脳体積画像、拡散強調画像)および臨床データを取得した。具体的には、15組のASD当事者とその非罹患同胞ペア(計30名)、さらに12組の健常兄弟ペア(24名)である。 途中段階ではあるが、ASDとその非罹患同胞の2群での脳灰白質体積の検討では、ASD群と非罹患同胞群で有意な灰白質の体積の差はみとめなかった。これは、非罹患同胞を含め3群比較をした過去の画像研究と矛盾しない結果となった。さらに、検定水準を下げた解析から、非罹患同胞群と比較し、ASD群で扁桃体や被殻の体積が減少しており、中前頭回で体積が増加しているという結果を得た。これらは過去のASD群のメタ解析で体積異常を指摘されている脳領域と一致していた。以上より、非罹患同胞は、臨床的にはASDと診断はされないが、ASDの病態に関連する脳領域において、統計学的には有意なレベルではないが、ごく軽度の脳構造異常を有しており、この共通所見こそがASDの病態に特異的な異常所見である可能性が示唆された。しかし、今回の解析結果は、途中段階での解析結果であり、サンプル数が少なく、健康対照群を含めた3群比較ではないため、あくまで予備的なものであるという前提を踏まえた上での解釈が必要である。 今後は、上記の症例全体を用いて、全ての脳画像モダリティーにて解析を行なう。具体的には、ASDとその非罹患同胞ペアと健常兄弟ペアの類似性の相違を比較することで、ASDにおける兄弟間の疾患による脳への影響を検討する。来年度中には解析を終了し、論文として発表する予定である。
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