2013 Fiscal Year Research-status Report
低酸素・概日周期・代謝制御の相互作用による腫瘍の悪性化と放射線抵抗性機構 の解明
Project/Area Number |
25861088
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 稔 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40644894)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 低酸素 / 概日リズム / 放射線抵抗性 |
Research Abstract |
低酸素によって概日リズム遺伝子PER2の発現レベルが上昇するのに、低酸素誘導因子(HIF)が関与しているかどうかを確認するために、HIF-1alpha、HIF-2alphaの過剰発現やノックダウンを行ったが、PER2の遺伝子発現が変化しなかった。このことから、PER2の低酸素による誘導はHIFを介さない経路で引き起こされていることが分かった。また、低酸素によるPER2の誘導は、PER2プロモーターを組み込んだレポーター遺伝子を用いた実験から、PER2の転写レベルで引き起こされていることも判明した。 PER2の過剰発現によるHIF-1活性の上昇のメカニズムを検討するために、HIF-1alphaのプロモーターや酸素依存的分解ドメインなどを利用したレポーター遺伝子を用いて実験を行った。結果、PER2によるHIF-1活性の上昇は、HIF-1alphaの遺伝子発現量ではなく、HIF-1alphaタンパクの安定性や、転写活性の変化によって引き起こされていることが明らかとなった。しかし、何種類かの細胞を用いた検討から、低酸素によるPER2の発現上昇や、PER2によるHIF-1活性の変化は細胞によって差があり、これらのメカニズムは、すべての細胞に適応できるものでないという結果も得ている。 今後、概日リズムと低酸素応答の相互作用をより詳細に解析してゆくとともに、低酸素応答と概日リズム、放射線抵抗性の関係性について検討を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で我々は、HIF-1alphaプロモーター活性、HIF-1alpha遺伝子の翻訳開始活性、HIF-1alphaタンパク質の安定性、HIF-1alphaのtransactivation活性などをルシフェラーゼ活性としてモニターするレポーター遺伝子を構築してきた。これらを用いるとともに、HIF-1alphaやHIF-2alpha遺伝子をノックダウンし、その影響を検討することによって、PER2遺伝子の低酸素による誘導に、HIFが関与していないことを明らかにすることが出来た。また、PER2によるHIF-1活性の誘導が、HIF-1alphaの遺伝子自体の発現量の変化によるものではなく、HIF-1alphaタンパクの安定性や、転写活性の変化によって引き起こされていることを明らかにするなど、予定通りメカニズム解析を進めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
In vitro、in vivoで概日リズムをリアルタイムに評価するために、PER2プロモーターを組み込んだレポーター遺伝子の恒常発現細胞株を樹立する。樹立した細胞株や、当研究室が有する、HIF-1応答レポーター遺伝子恒常発現株などを用いて、概日リズムと低酸素応答の相互作用を詳細に解析していく。 また、上記レポーター遺伝子導入細胞株を用いて、概日リズムとHIF-1活性や、放射線抵抗性の関係性について、in vitroやin vivoで検討を行っていく。 細胞によって、概日リズムと低酸素応答の相互作用に差があることから、現在最も解析が進んでおり、相互作用がはっきりと観察できる細胞をターゲットに研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究そのものは、ほぼ当初の予定通りに進捗したものの、いくつかの特殊試薬が輸入品であったため、物品の輸入およびその経理処理が平成26年度にずれ込み、「消耗品費」の消化が対予算約-35万円となった。 また、特許申請を優先させるために、当初予定していた研究成果公表や論文投稿を平成26年度に実施することとしたため、研究成果発表や英文校正、論文投稿費用として計上していた、各項目の対予算消化が、それぞれ「旅費」-7万円、「謝金」-5万円、「その他」-10万円となった。 平成26年度にずれ込んだ特殊試薬の輸入は完了している。平成26年度に計上していた消耗品費140万円は当初の計画通り、各種試薬や器具、マウスの購入費として使用する予定である。その他に関しては、平成25年度および26年度の予算を研究成果発表や英文校正、論文投稿費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)