2013 Fiscal Year Research-status Report
体外でタンパクを発現させる画期的な心グラフト機能修飾法の開発
Project/Area Number |
25861147
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
若山 顕治 北海道大学, 大学病院, 医員 (50646544)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 臓器保存 / 重水 / 心臓 |
Research Abstract |
(全体構想) 心移植における冷保存心グラフトを体外で修復し、再灌流後のグラフト障害軽減し、長期予後を改善する方法論を確立するために行う。グラフトを我々が開発した重水含有緩衝液内で低温酸素化、水素化し、冷保存中のエネルギー状態、細胞死、生存シグナルを生存方向に導く至適条件を見出し、そのメカニズムを追及する。 (目的) 重水液による新規心臓保護法において、1)新規心臓保護法の有用性:ラット心冷保存・移植モデル, 2)上記におけるa) アポトーシス・生存シグナル、b)保護性オートファジー、c) エネルギー代謝、d) 細胞骨格関連タンパク、e) 酸化ストレス・抗酸化能の推移, 3)シャペロン分子(14-3-3ζとその結合タンパク)の役割 4)ラット心臓の低温酸素化下での遺伝子導入、タンパク発現の可能性、効果、を明らかにする。 検討結果: A) 重水を含有する新規臓器保存液を作成し、ラット心臓を48時間冷保存後に異所性に移植し、グラフト生存率を検討した。これまで、UW液を用いた冷保存では、16時間程度がグラフト生着の限界時間とされていた。われわれは既に重水液1(Dsol)で36時間の冷保存が可能なことを報告しているが(Wakayama 2012 Transplant Int)、今回、さらに改良した重水液2 を用いたところ、48時間冷保存後の心移植グラフトの7日生存率は100%であった。 B) 14-3-3ζが心冷保存障害を軽減するか否かを明らかにするために、14-3-3ζプラスミドベクター、レンチウィルスベクターを作成した。心筋細胞株(H9c2)に遺伝子導入し、安定発現細胞株を作成した。対照として、ヒト腎尿細管細胞株(HK-2)、ラット小腸上皮細胞株(IEC6)、マウス肝細胞株(AML12)にも同様に遺伝子導入し、安定発現細胞株を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの心臓冷保存の限界時間を遥かに上回る長時間(48時間)の冷保存を実現し、保護作用を担うと推測される14-3-3ζを導入するためのベクターを作成し、安定発現細胞株も樹立した。動物モデルにおける心臓冷保存法の飛躍的な改善が担保されたことにより、その後のメカニズム解析は比較的スムースに進行すると予測する。また、メインの解析項目とした、14-3-3ζの発現ベクター、安定細胞株の樹立に成功したことにより、メカニズム解析もスムースに進行すると予測する。今後の検討に必要な条件、ツールを得ることができたことは、当初予定の通りであり、全体として概ね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット心臓の冷保存・移植モデルを用いて、新規重水液2の効果を引き続き検討する。重水液2は低温下で酸素化することによって、酸化的リン酸化を促進し、UW液を遥かに凌駕する細胞保護効果を発揮することを確認済である。冷温から準常温(22-25℃)での保護効果、水素ガスの併用効果を確認するとともに、保護メカニズムをタンパクのリン酸化動態とエネルギー状態から検証する。さらに、準常温での臓器保存が可能なことを確認できた後に、体外で遺伝子導入、siRNA, ShRNAベクターを投与し、体外でタンパクを翻訳レベルで制御可能か否かを検討する。これらの検討によって、体外でエネルギー状態と細胞環境の修復であること、体外でタンパクのリン酸化レベルを調節可能であること、体外でタンパクの発現・翻訳までの調節が可能であること、に対するProof of Conceptを得ることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
冷保存終了時あるいは移植後のラット心臓を用いた各種の免疫染色を行うために、薄切を多数外注する予定だったが、多数群の検体採取を優先させたために、計上していた外注費用が、H25年度ついては余剰となった。しかし、薄切、免疫染色は不可欠であり、次年度にまとめて行う。 H26年度は動物実験から得られた検体の免疫染色用の薄切、HE染色の外注費用、水素ガス濃度測定用のガスクロマトグラフィーのリース費用を、”その他”の支出として計上する。他は予定通り、動物実験、細胞実験に使用する消耗品が主な支出となる。
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[Presentation] Heavy Water and Hydrogen Gas Ameliorates Cold Preservation and Reperfusion Injury in Rat Liver2013
Author(s)
Shimada S, Fukai M, Wakayama K, Yamashita K, Taniguchi M, Suzuki T, Shimamura T, Kamiyama T, Furukawa F, Todo S, Taketomi A.
Organizer
Congress of European Society for Organ Transplantation 2013
Place of Presentation
Austria Center Vienna(Vienna, Austria)
Year and Date
20130908-20130913
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[Presentation] Heavy Water and Hydrogen Gas Confer Protection Against Hepatic Cold Ischemia and Reperfusion Injury in Isolated Perfused Rat Liver2013
Author(s)
Shimada S, Fukai M, Wakayama K, Yamashita K, Taniguchi M, Suzuki T, Shimamura T, Kamiyama T, Furukawa F, Todo S, Taketomi A.
Organizer
American Transplant Congress 2013
Place of Presentation
Washington State Convention & Trade Center (Seattle, USA)
Year and Date
20130518-20130522
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[Presentation] 低温下でエネルギー産生を賦活化させる新しい方法~有効性と普遍性
Author(s)
深井原, 若山顕治, 山下健一郎, 廣方玄太郎, 谷口雅彦, 古川博之, 島田慎吾, 小倉正臣, 鈴木友己, 嶋村剛, 尾崎倫孝, 神山俊哉, 藤堂省
Organizer
第113回日本外科学会定期学術集会
Place of Presentation
福岡国際会議場(福岡市)
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