Outline of Annual Research Achievements |
活性化プロテインC (APC)は正常肝における虚血再灌流傷害 (IRI) を抑制するとされているが, APCが脂肪肝でのIRIを抑制するかは明らかでない.脂肪肝IRIでのAPCの効果を明らかとするため, 脂肪肝でのIRIと正常肝でのIRIにおいてAPCの効果を比較検討した. [方法]通常食(ND)と高脂肪食 (HD)を9週間与えたマウスを, control群とAPC投与群とに分け, 肝の70%を60分間虚血後再還流するIRIモデルを作成し, 再還流後4時間(h), 24hに肝傷害や炎症細胞浸潤の程度, AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化を比較した. またin vitroでのAPC投与の効果を検討するため, 脂肪肝マウスから採取した初代培養肝細胞をH2O2存在下で培養し, APCを投与しないcontrol群とAPC投与群とで24時間後の生存率, 細胞内ATPの量, AMPKの活性化を比較した. [成績]NDマウスではAPCの投与は4hにおいてAST, ALTや炎症細胞浸潤を有意に減少させた. 一方, HDマウスではAPCは24hにおいてAST, ALTや炎症細胞浸潤を有意に減少させた. またNDマウスではAPCは内皮傷害を抑制したが, HDマウスではその効果は得られなかった. NDマウスでは, APCはAMPKのリン酸化に影響を与えなかったが, HDマウスではAPC投与でAMPKのリン酸化が有意に上昇した. In vitroではAPCを加えると肝細胞の生存率が有意に高くなり, AMPKのリン酸化が増加し, 細胞内のATPも増加していた. [結語]正常肝IRIにおいて, APCは早期の肝傷害を抑制し, その効果は炎症細胞浸潤や内皮細胞傷害の抑制を通じて発揮されると考えられるとし, 一方脂肪肝IRIにおいては, APCは晩期のIRIを軽減し, その効果には炎症細胞浸潤の抑制に加え, AMPKの活性化を通じたATP代謝経路が関係すると考えられた.
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