2013 Fiscal Year Research-status Report
胃癌における5-アミノレブリン酸を用いた光力学的診断の有用性に関する研究
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25861184
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 剛 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50452389)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 5-アミノレブリン酸 / 光力学診断 / 審査腹腔鏡 / 腹腔鏡手術、内視鏡外科学 |
Research Abstract |
(目的)5-アミノレブリン酸 (以下 5-ALA) を利用し、その代謝における腫瘍細胞と正常細胞の違いを利用することで光力学診断を行う方法が種々の悪性腫瘍において報告されている。本研究は、漿膜浸潤を伴う進行胃癌を対象とし、標準検査法である通常光腹腔鏡検査との比較においての5-ALAを用いた光線力学的診断法(ALA-PDD)の有用性、また早期胃癌を対象とした内視鏡的な範囲診断での有用性を示し、胃癌に対する5-アミノレブリン酸を用いた診断方法の有効性を明らかにすることを目的とする。 (成果)平成25年度から漿膜浸潤を疑う胃癌に対する審査腹腔鏡検査の際のALA-PDDの臨床研究を開始し、合計10例の患者に対し実施した。その結果、①通常光観察において腹膜播種が疑われた患者4例においては全例ALA-PDD陽性であった。②2例の患者において通常光観察では発見できなかった腹膜播種疑い病変を新規に発見した。同病変を生検し病理学的に腹膜播種の確定診断を得ることで上乗せ効果を確認した。③化学療法施行後患者において、生存細胞部位の同定を行うことが可能であった。④本試験において、光過敏、肝障害等のモニタリングを行った結果、有害事象は認めなかった。 (意義)他疾患で用いられていた本技術を胃癌の分野に臨床導入し、そのfeasibilityならびに safetyが確認されたといった点で有意義な結果と考える。さらに、通常光腹腔鏡検査においてはfalse negativeであった症例に対して、20%の上乗せ効果を得られたことからも有効な検査法になりうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胃癌腹膜播種病変における5-ALAを用いた光線力学診断の有用性の検討については、平成25年度に、大阪大学医学部附属病院研究倫理審査委員会での研究実施計画の承認が得られ、審査腹腔鏡検査時の5アミノレブリン酸を用いた臨床試験を開始することができた。その臨床試験の成果として、上記結果を得ることができ、そういった点から順調な研究計画の遂行ができている評価をしている。臨床試験として患者への投与を開始した成果として、本研究の安全性、実施の実現性も確認できた。本結果は、新規課題を含めて、次年度以降につながる成果と考える。さらに本診断技術を、保険収載にむけての医師主導治験として現在計画している。 一方、内視鏡的病範囲診断における5-ALA診断の有用性の検討については、予定していた青色光レーザー光源を搭載された次世代型内視鏡システムであるFujiFilm社製のLasereoを用いる予定であったが、現在施設利用等の社会条件の問題で開始できておらず次年度の課題と考えられる。 また、病変の範囲診断における5-ALA診断の有用性の検討についても上記研究倫理審査委員会での研究実施承認が得られ、胃癌切除症例を対象として、実臨床において臨床試験を開始した。しかし、現在その条件設定等に苦慮している実状にある。内服薬の量、時間コース、観察条件等の条件設定においてfeasibilityのためのvalidation studyを実施中である。 上記進捗を踏まえ、当初の研究計画にほぼ順調な進展であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
胃癌腹膜播種病変における5-ALAを用いた光線力学診断の有用性の検討については、平成25年度の結果を踏まえ、引き続き症例の蓄積を行う見込みである。腹膜播種診断の可能性とともに術前化学療法患者における残存腫瘍の評価等での見込みについて検討を行う。さらに、本試験の結果を踏まえ、本研究薬剤の保険収載を念頭とした大規模の多施設共同研究としての医師主導治験を実施する計画を立案し、遂行していく予定である。具体的には、主要評価項目として光力学診断による上乗せ効果さらに、副次的評価項目として、副作用発現頻度・程度、診断精度と規定し、10%の上乗せ効果を期待し、合計180症例の集積を予定している。本研究の成果によって胃癌腹膜播種診断における光力学診断の有用性を証明するとともに、薬剤の保険収載へつながる足掛かりとなる研究となる見込みである。 また、内視鏡的病範囲診断における5-ALA診断の有用性の検討についても、平成26年度より臨床試験として、患者登録を開始し、そのsafetyならびにfeasibilityの評価を行う見込みである。特に、進行患者を対象とし、実現可能性ならびに薬剤投与の量、時間経過等のvalidationが必要と考える。 また、病変の範囲診断における5-ALA診断の有用性については、当院病理部と協力して正確な病変の評価と光力学診断の対比を行っていく見込みである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に必要な物品を購入したため。 来年度に必要な物品を購入するため。
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