2013 Fiscal Year Research-status Report
低酸素誘導因子による癌幹細胞制御システムの解明と新規治ターゲットの検索
Project/Area Number |
25861185
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
植村 守 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10528483)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / 低酸素 / 低プロテアソーム活性 / 治療抵抗性 |
Research Abstract |
癌の抗癌剤・放射線治療抵抗性や再発には、癌幹細胞の存在が関与していると考えられる。一方、低酸素は癌の基本的環境で、多くの研究がおこなわれてきてきたが、近年、低酸素による上皮間葉移行(EMT)誘導や、EMTによる幹細胞性付与等の報告がなされてきており、低酸素と癌幹細胞との関連が注目されている。エピジェネティック制御機構等がこの関係の中核に存在することが示唆されているが、詳しい癌幹細胞性維持機構は不明なままである。本研究ではこれらの機序に関わる因子及び標的遺伝子を解明し、制御することにより、癌幹細胞の産出を抑制し癌の根治につながる新たな治療法を創出することを目標としている。 低酸素誘導因子による大腸癌の癌幹細胞性維持機構に関して検索していく中で、低プロテアソーム活性がSphere formationの亢進に関わり、低プロテアソーム活性下の大腸癌細胞において各種の幹細胞マーカーが上昇しているなど、大腸癌幹細胞性と密接な関連性を示し、癌幹細胞の抗癌剤耐性(大腸癌治療において実臨床で使用している主力の抗癌剤である5-Fuとオキサリプラチン)や放射線治療耐性にも深くかかわっていることが明らかとなった。また、その他に低酸素誘導因子と癌細胞の治療抵抗性との因果関係を検索していく中でsecretoglobin, family 2A, member 1 (SCGB2A1)の発現が、幹細胞関連遺伝子であるWnt、Zeb1、Twistの発現と関連性を示すことや、Sphere formation を亢進させるなど、癌幹細胞性と密接に関連していることが明らかとなった。さらに、in vitro実験において抗癌剤耐性や放射線治療耐性とも関連性が証明できた。また、実際の大腸癌切除サンプルを用いた検討でも、SCGB2A1高発現が大腸癌患者の予後因子となりうることを明らかにし、論文化して発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸癌における低酸素誘導因子と癌幹細胞性維持や治療抵抗性(抗癌剤治療、放射線治療)に関して検索していくうちに、低プロテアソーム活性やSCGB2A1発現などといった当初は予測していなかった重要な因子が同定され、研究の幅が広がったことが当初の計画が遅れた要因である。しかしながら、これらの因子は、治療抵抗性に直結していることから、これらの研究成果が新規治療戦略の確立に寄与する可能性が高いと判断しており、本研究そのものの目的とは完全に一致している。特に低プロテアソーム活性に関しては、さらに注力すべき重要な研究項目であると考えている。上記の経緯から、当初予定していたエピジェネティック制御機構による低酸素誘導因子を介した癌幹細胞性に関しての研究の進捗自体は遅れることとなったが、研究全体としての大きな遅れはないと考えている。 また、ヒストン脱メチル化酵素JMJD1Aによる低酸素誘導因子機構を利用した癌幹細胞性維持システムの解明事態を難しくしている要因の一つには、JMJD1Aなど特に酵素活性の強いヒストン脱メチル化酵素の作用が多岐にわたっていることがあげられる。JMJD1Aによって、グローバルなヒストン脱メチル化が起こり、多くの転写因子を含む遺伝子群の発現が亢進されるため、癌細胞性維持機構にのみに関わる特異的なシグナル変化を同定することが困難であるが、クロマチン免疫沈降法とシークエンサーを組合わせて(ChIp-seq)、癌幹細胞性維持機構に特異的なシグナルの変化を同定していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように主に、当初の計画通りヒストン脱メチル化酵素による低酸素誘導因子を介した幹細胞性維持機構の検索のためChIP-seqにより、特異的なシグナルや遺伝子発現の変化を同定していき、細胞実験により、同定された各因子が幹細胞性維持機構とかかわることを確認しつつ、治療標的因子として有用かどうかを検討していく予定である。 また、低プロテアソーム活性そのものが大腸癌幹細胞性維持機構と密接に関連していることが明らかになってきたため、マウスを用いた造腫瘍性の検討により低プロテアソーム活性と癌幹細胞性との関連性をより明確に示していく予定にしている。予備実験の結果では、低プロテアソーム活性と細胞周期静止状態との関連性が示唆されており、これに関しても癌幹細胞性との関連性を示す証拠としてさらに、実験を進める。癌幹細胞性とかかわる因子の一つとして癌細胞内の活性酸素(Reactive oxygen species; ROS)が近年注目されているが、低プロテアソーム活性とROS活性の関連性に関しても検討する。 治療標的因子の検索としては、まず、低プロテアソーム活性化の大腸癌細胞においてみられる特異的な遺伝子発現変化をmicro arrayにより検討し、低プロテアソーム活性下における癌幹細胞性維持機構や治療抵抗性惹起機構に関して検討を進める予定である。これに加えて、低プロテアソーム活性やその下流シグナルのうち癌幹細胞治療として有用な治療標的因子を同定していく予定である。これには、低プロテアソーム活性下の大腸癌細胞を特異的に攻撃しうる化合物の検索を化合物ライブラリーの中からスクリーニングをすることと計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に必要な物品を購入したため。 来年度に必要な物品を購入するため。
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[Journal Article] SCGB2A1 is a novel prognostic marker for colorectal cancer associated with chemoresistance and radioresistance.2014
Author(s)
Munakata K, Uemura M, Takemasa I, Ozaki M, Konno M, Nishimura J, Hata T, Mizushima T, Haraguchi N, Noura S, Ikenaga M, Okamura S, Fukunaga M, Murata K, Yamamoto H, Doki Y, Mori M.
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Journal Title
Int J Oncol
Volume: 55(4)
Pages: 1521-1528
DOI
Peer Reviewed
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