2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25861201
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中村 淳 佐賀大学, 医学部, 助教 (60404175)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | TFF1 / TFF3 / 胃癌 / 大腸癌 / 浸潤 / 転移 / 生存 |
Research Abstract |
TFF familyにはTFF1~3が存在し、消化管粘膜の防御・修復に関わるといわれている。近年では消化器癌を中心にその発癌、進展との関係が報告されている。 TFF1は胃癌特異的な癌抑制遺伝子とされているが、その発現制御機構については様々な報告があり統一された見解はない。TFF1のプロモーター領域には22個のCpG配列が存在しており、DNAメチル化による発現調節の可能性が推測された。そこで、胃癌細胞及び胃癌の切除標本を用いて、バイサルファイトシーケンス法により、TFF1プロモーター領域のメチル化の状況を解析した結果、統計学的有意差をもってメチル化の程度と発現量の間に逆相関を認めた。また、進行胃癌の切除標本182例を用いてTFF1の発現と臨床病理学的因子との関連を解析した結果、TFF1低発現例は高発現例と比較して有意に癌の深達度が浅く、予後良好であった。さらに、182例のうち手術単独例108例の解析においてTFF1は独立した予後規定因子であった。以上の知見は、2013年3月のInt J Oncolに発表した。 さらに、大腸癌組織154例を用いて、TFF1, 2, 3の発現をそれぞれRT-PCRおよび免疫組織染色で評価し、臨床病理学的因子との関連を解析した。TFF1および2については臨床病理学的因子、生存期間いずれも有意な相関を認めなかった。しかしながら、TFF3のmRNA発現解析において、TFF3高発現例は低発現例と比較して有意に遠隔転移の頻度が高く、さらに生存解析においても独立した予後規定因子として抽出された。さらに、根治切除を施行した134例の大腸癌を対象とした解析において、TFF3高発現例は低発現例と比較して有意に早期再発をきたすことが明らかとなった。以上の内容については、第114回日本外科学会において発表を行い、すでに論文も作成して投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画として提出した、①胃癌におけるTFF1プロモーター領域のメチル化状況について解析し、発現との関係を明らかにする。②約150例の大腸癌切除組織におけるTFF1の発現を免疫組織染色(あるいはreal time RT-PCR)で評価し、臨床病理学的因子や生存期間との関係を解析する、の2点については完遂できた。とくに①については既に論文としてpublishされており、②についてもTFF1では期待した結果が出なかったが、TFF3において大腸癌における発現意義を明らかとすることができた。前述の結果よりTFF3は大腸癌における転移・予後予測マーカー、さらには新規の治療標的分子となることが期待されると考えている。したがって、胃癌いついては今後も予定通りTFF1分泌蛋白を用いた治療モデルの開発を目指すこととし、大腸癌についてはターゲットをTFF3に絞って、in vitro, in vivo実験を追加し、TFF3を標的とした治療モデルの確立を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
TFF1の発現欠失細胞を利用した治療モデルについては、今後方針を若干変更して、対象を胃癌に絞って進めていく予定である。大腸癌の治療モデルについては、TFF1ではなくTFF3に焦点を当てて研究を進めていく方針とする。 具体的には、まずTFF1高発現胃癌細胞を用いて、siRNAによりTFF1発現欠失胃癌細胞を樹立する。続いて、TFF1欠失細胞とコントロール細胞において、細胞増殖、浸潤能、遊走能、抗癌剤感受性などを比較する。これまでの臨床サンプルの解析からは、TFF1は浸潤能に関係している可能映画高いと考えている。以上の機能解析を行った後、TFF1低発現細胞(メチル化によってsilencingされている細胞)にTFF1を投与することで細胞増殖抑制効果があるか否かを確認し(基礎実験においては、同様の報告あり)、続いてヌードマウス同所移植モデルを用いて、TFF1分泌蛋白を用いた胃癌治療の可能性を探索する。 大腸癌については標的分子をTFF3に変更し、まずはTFF1と同様siRNAのテクニックを利用してTFF3発現欠失大腸癌細胞の樹立を試みる。TFF3欠失細胞とコントロール細胞において、細胞増殖、浸潤能、遊走能、抗癌剤感受性などを比較する。臨床解析の結果、TFF3は遠隔転移と関係しているので、動物実験モデルを用いて遠隔転移形成の差についても比較検討することとする。
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