2013 Fiscal Year Research-status Report
実質臓器における炎症性疾患重症化機構の解明と新規治療法開発の基礎研究
Project/Area Number |
25861215
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
田代 良彦 順天堂大学, 医学部, 助教 (20636245)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 急性肝炎 / 血液線維素溶解系 / プラスミン / 炎症性サイトカイン / マトリックスメタロプテイナーゼ |
Research Abstract |
本年度の研究で代表者らは、Toll like receptor-9 (TLR9)のアゴニストであるCpG-ODN1826とD-ガラクトサミンを使用して急性肝炎のマウスモデルの作製に成功した。マウスモデルの生体組織中で、血液線維素溶解系 (線溶系)及び各種マトリックスメタロプテイナーゼ(MMP)等の各種プロテアーゼの活性化と各種炎症性サイトカイン血中濃度の上昇を認めた。そこで代表者らは、急性肝炎を始めとする各種炎症性疾患におけるこれらプロテアーゼ活性化の意義、機能解析を進めるため、線溶系因子あるいはMMP-9遺伝子欠損マウスを使用し、急性肝炎マウスモデルを作製したところ、これらの遺伝子欠損マウスでは致死的な急性肝炎モデルにおいて有意な生存率の改善、さらに臓器組織の病理所見でも炎症の鎮静化傾向が認められた。 こうした実験結果を基礎として、代表者らは主要な線溶系因子であるプラスミンの新規阻害剤の投与による肝炎病態の制御を試みた。プラスミン阻害剤の投与により、血中の各種炎症性サイトカイン濃度は抑制され、かつ生存率も有意な改善を認めた。その機序として、肝炎病態に関与する炎症性サイトカインの多くが、各種MMPの活性化に伴い、細胞外ドメイン分泌され、末梢血中へ産出されていること、そしてプラスミン阻害剤がこの各種MMPの潜在型から活性型への変換を障害することで、炎症性サイトカインの血中濃度上昇を抑制し、致死的な病態の改善に寄与していることが示唆された。また病理組織観察・精査及び各種臓器組織浸潤細胞群のフローサイトメーター解析から、プラスミン阻害剤の投与により、肝臓・脾臓への炎症性細胞の浸潤が抑えられていることも判明した。その機序として、線溶系とMMPとの相互活性化機構が発動し、臓器組織への炎症性細胞動員、浸潤が制御されていることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は①主に急性肝炎、急性膵炎など実質臓器の炎症疾患の薬剤誘発モデルマウスの確立、②各種モデルマウスに対するプラスミン阻害剤投与による生存率の改善の確認、③各種モデルマウスの血中、臓器中における炎症性サイトカイン濃度の上昇の確認とプラスミン阻害剤によるそれらの制御、④炎症性サイトカインの分泌がプロテアーゼ活性によって制御されていることの確認、⑤各種炎症性サイトカインの供給源を同定することを目標に実験を行った。現在までに急性肝炎に関しては、上記①から⑤まで予定通り実験を遂行し結果を得ることが出来た。 さらに平成26年度に実験予定であったMMP-9遺伝子欠損マウスを使用した急性肝炎マウスモデルの実験を行うことが出来た。その結果、MMP-9遺伝子欠損マウスでは有意に生存率が改善し、さらには臓器中における炎症の鎮静化傾向が認められ、プロテアーゼ活性化の意義、機能解析を予定より進めることができた。平成26年度ではこれまで得られた結果をもとに、より詳細な解析を行わなければならないが、全体的にこれまでの研究はおおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
急性肝炎モデルにおいて、血液線維素溶解系(線溶系)因子群や各種MMPの活性化を確認しているが、今後の研究課題として、何がこれらのプロテアーゼ活性化のトリガーになっているのか、またどのような細胞がこうしたプロテアーゼ産生に関わっているのか、など更なる検討が必要である。肝臓・脾臓などの切片からこれらの因子の免疫染色を行ったり、これらの臓器から各種細胞を得てFACSでソーティングを行い、解析を行う予定である。 また急性肝炎モデルでの各種臓器への炎症性細胞の浸潤を認めているが、その炎症性細胞の働きや病像形成との関わりについても解析が必要である。またそれらの炎症性細胞の浸潤にCCL2を始めとする各種ケモカインが関係していると考えられるが、急性肝炎モデルにおいてYO2の介入がこれらのケモカインに対する影響に関して詳細な解析を行いたいと考えている。 In vitroでは、マウスの腹腔マクロファージのcell lineであるRAW264.8を用いて、plasminやplasmin activatorがマクロファージの活性化にどのように関わるのか、炎症性サイトカイン/ケモカインの産生にどのような影響を与えているのか、遺伝子発現レベルや蛋白レベルでの解析を行う予定である。 今後plasminをターゲットにした新規治療を考えていくにあたって、side effectについても考慮する必要がある。①MMP阻害剤は筋肉痛や関節痛などの重大なside effectが報告されていること、②plasminが血栓の溶解に重要な役割を果たしていることから血栓症などのリスクが増大する可能性があること、などに留意しなければならない。急性肝炎モデルの肝臓の病理所見などではYO-2投与による明らかな血栓の増加は指摘できないが、side effectの有無に関してはより多角的な視点から詳細な解析が不可欠と考えている。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Inhibition of plasmin attenuates murine acute graft-versus-host disease mortality by suppressing the matrix metalloproteinase-9-dependent inflammatory cytokine storm and effector cell trafficking2014
Author(s)
Aki Sato, Chiemi Nishida, Kaori Sato-Kusubata, Makoto Ishihara, Yoshihiko Tashiro, Ismael Gritli, Hiroshi Shimazu, Shinya Munakata, Hideo Yagita, Ko Okumura, Yuko Tsuda, Yoshio Okada, Arinobu Tojo, Hiromitsu Nakauchi, Satoshi Takahashi, Beate Heissig, Koichi Hattori
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Journal Title
Leukemia
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed
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[Journal Article] Investigation of free cancer cells in peripheral blood using CEA mRNA expression in perioperative colorectal cancer patients.2013
Author(s)
Nagayasu K, Komiyama H, Ishiyama S, Ogura D, Takahashi R, Tashiro Y, Niwa K, Sugimoto K, Kojima Y, Goto M, Tomiki Y, Niwa S, Sakamoto K
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Journal Title
Molecular and clinical oncology
Volume: 1
Pages: 668-674
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] T1 colorectal cancer with synchronous liver metastasis2013
Author(s)
Sugimoto K, Kawai M, Takehara K, Tashiro Y, Munakata S, Ishiyama S, Komiyama H, Takahashi M, Kojima Y, Goto M, Tomiki Y, Sakamoto K, Kawasaki S
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Journal Title
Case Reports in Gastroentelorgy
Volume: 7
Pages: 266-271
DOI
Peer Reviewed
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