2013 Fiscal Year Research-status Report
消化管腺腫発症に伴うICCの形態的・機能的変化の解析
Project/Area Number |
25861219
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
菊田 幸子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10367089)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | カハールの介在細胞(ICC) / ApcMin/+マウス / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
蠕動運動をはじめとする消化管運動は、筋層を構成する平滑筋細胞の調和のとれた運動によって実現される。カハールの介在細胞(Interstitial cells of Cajal; ICC)は、消化管運動におけるペースメーカー機能や興奮伝達機能を担っており、調節機構の中で重要な役割を果たしている。 ところで、家族性大腸腺腫症のモデル動物であるApcMin/+マウスは、腸にポリープ状の腺腫を高頻度に自然発症する事が知られている。申請者は、このマウスの腺腫形成領域の筋層が、腺腫の発達に伴って肥厚していること、そして肥厚した筋層では、筋細胞数の増加や細胞間隙の拡大に加えて、ICCの増加と形態変化が認められることに注目した。筋細胞数の増加や細胞間隙の拡大によって肥大増生した喘息の気道筋層では、過剰な収縮等の運動異常が報告されている。そこで、腺腫形成領域の肥厚した筋層でも、平滑筋細胞の調和のとれた運動が困難となっており、増殖ならびに形態変化を起こしたICCが、筋層の運動機能の正常化を図っているのではないか?と推測した。本研究では、この推測に基づき、ApcMin/+マウスの腫瘍発症の現場での微小環境の変化に伴うICCの変化を、形態と機能の両面から追跡していく事を計画している。 本年度は、腫瘍発症の現場における形態変化に注目して解析を行った。その結果、腺腫形成領域の拡大された細胞間隙には、形質細胞や肥満細胞といった炎症細胞が多く認められることが明らかとなった。また、ICCの形態変化について詳しく解析したところ、腺腫形成領域のICCは、正常領域におけるICCと同様に同種細胞間で細胞性ネットワークを形成していたが、正常領域では認められない方向(輪走・縦走筋層)への突起の伸長も認められた。輪走筋層へ伸びた突起は、神経束に密接しながら伸長し、周囲の平滑筋細胞とも密接している様子が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の進捗状況を「(3)やや遅れている。」と判断した大きな理由として、標本収集が思うように捗らなかった事が挙げられる。ApcMin/+マウスは当研究室で繁殖・維持しており、これまでの解析には腺腫が十分に発達する7ヶ月齢のマウスを用いてきた。しかし、最近ApcMin/+マウスが4か月齢程度で脱肛を起こして死亡するというトラブルが多発している。その為、本年度は十分に発達した腺腫標本がなかなか得られないという状態が続いてしまった。今後は、繁殖個体の新たな購入も視野に入れて対策を講じて行きたいと考えている。 なお、本年度は腺腫形成領域のICCが輪走筋層へと伸ばした突起の先で、どのような細胞とギャップ結合を形成しているのかについて明らかにするために、透過型電子顕微鏡を用いた超微形態学的解析を行ってきた。これまでの解析の中でICCの細胞質突起が、神経線維束に密接しながら平滑筋細胞とも密接している様子が認められたが、平滑筋細胞との間のギャップ結合の形成までは確認できていない。引き続き解析を行っていく事を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
先述した通り、本年度に行う予定であった、腺腫形成領域のICCがどのような細胞とギャップ結合を形成しているのかを明らかにする為、引き続き超微形態学的解析を行っていく予定であるが、それに加えて以下の2つの疑問についても明らかにしていく事を計画している。 1)腺腫形成領域の筋層では、どの様な形態的・機能的変化が起きているのか? 具体的には、これまでの解析から、腺腫形成領域の拡大された細胞間隙には、形質細胞や肥満細胞といった炎症細胞が多く認められることが明らかになったが、細胞成分の他に、細胞外マトリックスについても変化の有無を明らかにしていく。また、ICCの形態的・機能的変化の有無を調べるために、ICCの超微形態レベルでの異常の有無や、TMEM16A (Transmembrane Protein 16A)等のICCの機能と関わる物質についても解析していく。更に、細胞増殖マーカーであるBrdU (Bromodeoxyuridine)等を用いてICCや平滑筋細胞の増殖の有無を明らかにしていく。 2)この現象はApcMin/+マウス小腸に限られたものなのか? ICCには複数ののサブタイプが存在し、その分布には、消化管の部位によって異なる特徴が認められる。そのため、小腸とは異なるICCサブタイプの分布を示す大腸においても同じようなICCの形態変化が認められるか否かについて検証していく。また、APC遺伝子の変異マウスであるApcMin/+マウスでは、ICCを始めとする全ての細胞がwild typeとは異なる遺伝的背景を持つことになる。従って、これらの現象がApcMin/+マウスに限られた変化である可能性も否めない。そこで、wild typeマウスや、ヒトの消化管腫瘍においても同様の形態変化が認められるか否かを解析していくことを計画している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、他の予算で必要な試薬などの多くを購入する事が出来たため、当初の予定より使用額を低く抑える事が出来た。 次年度は、他の予算が存在しない為、必要な試薬などは全て当研究費で購入していく予定である。また本年度は、当研究室で繁殖・維持しているApcMin/+マウスのコロニーでトラブルが多発したため、次年度は繁殖個体の新たな購入も検討しており、本年度の余剰分をその購入費用に充てたいと考えている。
|
Research Products
(2 results)