2013 Fiscal Year Research-status Report
肝癌特異的な変異遺伝子ARID2の肝癌エピゲノム異常誘導機構の解明
Project/Area Number |
25861221
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
古田 繭子 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 特別研究員 (00647183)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ARID2 / 癌ゲノム / クロマチン |
Research Abstract |
本年度は、肝癌の全ゲノムシークエンスを合計245症例において終了した。シークエンスデータは公開データベースに順次アップロードしており、一部はすでに公開されている。肝癌全ゲノムシークエンス解析の結果、最終的に6.12% (15/245)の肝癌症例に癌特異的なARID2の変異を認めた。加えて、同一症例の癌部と非癌部が対になったRNAが得られた症例についてRNAシークエンスを行い、ARID2の発現量や転写産物に与える構造変化について詳細に比較を行った。我々が施行した解析に用いた肝癌症例で検出された遺伝子変異情報は既存の報告と同様にARID2は肝癌において機能欠損型変異を持つ事が示唆された為、ARID2のノックダウン、過剰発現実験を施行した。その結果、ARID2の発現抑制と過剰発現により、細胞増殖の亢進と抑制がそれぞれ見られた。さらに、ARID2の発現抑制により、サイトカインやキナーゼを含む癌関連のシグナル経路が活性化していた。これらの結果はARID2が潜在的に癌抑制遺伝子として働くことを示唆する。一方で、ARID2変異が検出された臨床検体ではARID2の癌における転写産物量の低下が見られなかった。これは肝癌におけるARID2の機能欠損型と予想されるゲノム変異が単純に発現低下を起こしている物ではない事を示唆する。以上の成果は2013年アメリカ癌学会でのポスター発表、第72回日本癌学会で口頭演題として報告した。今後肝癌で検出されたARID2変異の詳細な機能解析を行い、肝癌に特徴的なARID2変異とトランスクリプトへの異常の相関関係について詳細な解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全ゲノムシークエンスのデータが追加が予定されたため、より多くの症例での解析が可能になった。 そのため全ゲノムシークエンスデータが完了するのに時間がかかった。現在までに完了している為、今後は予定通りに進行すると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
<研究計画の変更> ゲノムの変異情報がトランスクリプトの異常と予想どおりの相関を示さなかったため、肝癌におけるARID2変異が単純に機能欠損型ではない可能性が浮上してきた。そこで、肝癌で見つかった変異を模倣するコンストラクトを作成し、機能解析を行う事を追加する。 <その他> 研究計画のとおり、ARID2下流の関与するシグナル経路を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度研究成果の概要に記したとおり研究計画の進行に変更が生じた事により、記載した研究計画実施が次年度に持ち越された。 本年度はARID2の詳細な機能解析の為、分子生物学的実験に使用する試薬類に持越し分を使用する。
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