2013 Fiscal Year Research-status Report
梗塞心筋における組織内環境の改善による自己再生能力の増強と細胞移植治療への応用
Project/Area Number |
25861229
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藏澄 宏之 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (50645116)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心筋再生 / メカニカルストレス / 細胞治療 |
Research Abstract |
細胞移植による再生治療は重症虚血性心血管疾患に対する新たな治療法として期待されている。しかし、これまでに行われた臨床研究において、その治療効果は限定的であり、患者の年齢や病態などに多く左右されることが判明している。移植された細胞の組織での生存(生着)率は極めて低いことや、細胞移植による治療効果の持続時間が短いことが、治療効果不十分の原因と考えられ、治療効果改善のための研究が行われている。 本研究は、臓器の自己再生能力を生かした内因性再生に着目した、新たな細胞治療を開発することを目的としている。組織内環境因子の制御により内部環境を整えることで、自己再生能力の底上げを行うとともに移植細胞の機能・動態を活性化することで、より高い治療効果が得られると考える。 平成25年度の研究実績としては、マウス心筋梗塞モデルを用いて、組織環境因子の制御(メカニカルストレスの軽減)が、内因性心筋再生を促すことを示した。 具体的方法としては、C57BL/6マウスを用い、冠動脈左前下行枝の結紮により障害心臓(心筋梗塞)モデルを作製した。冠動脈結紮の60分後に、障害心臓をドナー心臓として摘出し、別の正常なマウスの腹腔内に移植した。移植された障害心臓はメカニカルストレスをほとんど受けることなく、冠動脈からの血流供給を受けながら心拍動を続ける(Unloading心臓)。冠動脈結紮の60分後にSham開腹を行い、心臓はそのままとし、通常のメカニカルストレスの下に心拍動を続ける(Loading心臓)ものを対照群とした。障害心臓を摘出し、Unloading心臓とLoading心臓の心筋梗塞範囲を計測した結果、Unloading心臓において有意に心筋梗塞範囲が減少していることがわかり、メカニカルストレスを軽減したUnloading環境は、内因性心筋再生に有利であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り研究を遂行できており、マウスUnloading心臓はLoading心臓に比べ心筋梗塞の面積が減り、心筋の線維化を抑制できることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
心筋組織における遺伝子の発現変化をマイクロアレイで調べ、心筋再生に関与する新規分子を同定する。 Unloadin心臓で同定された新規分子のうち3~4 個を選択し、これらの分子が心筋幹細胞機能を改善する効果をIn vitro 及びIn vivo で検証する。さらに、マウス心筋梗塞モデルを用いて、内因性再生因子(メカニカルストレス又は前年度に同定された分子)の制御が外因性心筋再生治療効果に及ぼす影響を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の実験内容に変更はなかったが、当初予定していた実験試薬の変更により、322,246円分の未使用額が生じた。 次年度に予定している、マイクロアレイを用いた心筋再生に関わる遺伝子の解析費用として、平成26年分と併せて使用する。
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