2013 Fiscal Year Research-status Report
破骨細胞形成を制御する受容体RANKシグナルの機構解明とその応用
Project/Area Number |
25861297
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田口 祐 東京大学, 医科学研究所, 助教 (20549472)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 破骨細胞 / 骨代謝 / RANK |
Research Abstract |
骨を分解する破骨細胞は体内の骨の新陳代謝と骨量維持に大きく関与しているため、破骨細胞の分化・形成の異常は骨粗鬆症など骨疾患の原因となる。そのため、破骨細胞の分化メカニズムを詳細に解明することで得られる知見は、骨疾患の治療において大いに役立つと考えられている。 破骨細胞は前駆細胞に発現している受容体RANKへの刺激により分化誘導されることが知られている。本研究代表者はRANKにおいて分化誘導に必須な領域HCRを同定しており、本年度はHCRの機能解析を行うと共に、HCRが機能する分子メカニズムの解明を目指してHCR結合タンパク質の同定を試みた。また、破骨細胞分化に関与する新規遺伝子の同定を目指し、マイクロアレイデータの解析を行った。 HCR領域と同じアミノ酸配列のペプチドを合成し、担体に固定してカラムを作成し、RANKを刺激した破骨前駆細胞の溶解液をカラムに通すことで、HCRに結合するタンパク質を精製することに成功した。現在、LC/MSを用いた解析により、精製タンパク質を同定している。また、本研究代表者が持つマイクロアレイデータと、データベースに公表されているマイクロアレイデータを網羅的に比較することで、RANK刺激依存的に発現量が低下する遺伝子を13種見出した。これらの遺伝子を破骨前駆細胞にて強制発現させて破骨細胞分化への影響を調べたところ、分化する細胞数を減少させる遺伝子が1つ、増加させる遺伝子が2つ有ることを確認した。すなわち、破骨細胞分化に関与する可能性が高い遺伝子を3つ同定することに成功した。現在、これらの遺伝子の機能を解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、受容体RANKの機能領域HCRの分子メカニズムを明らかにすることと、破骨細胞分化に関与する新規遺伝子を同定・解析することで、破骨細胞の分化メカニズムを多視点から詳細に明らかにすることである。 HCRにおける分子メカニズムを明らかにするために、HCRに結合するタンパク質の同定を試みた。まず、HCR領域のアミノ酸配列のペプチドを合成し、そのペプチドを担体に固定してカラムを作成した。そして、RANKを刺激した破骨前駆細胞の溶解液をカラムに通して、HCRに結合するタンパク質の精製を行った。その際、合成ペプチドの担体への結合方法、破骨前駆細胞の可溶化方法、カラムへ通す細胞溶解液の量などの条件検討に時間を要したため、本年度中に行う予定であったLC/MSによる解析が次年度へと持ち越され、研究計画に遅れが生じた。また、HCRの機能を応用した破骨細胞分化制御方法を構築する計画であったが、実施が遅れている。 しかし、破骨細胞分化に関与する新規遺伝子を同定するにあたり、研究計画では候補遺伝子の強制発現による分化の影響を調べるまでが本年度の計画であったが、次年度の計画であった遺伝子の機能解析まで進められた。 従って、全体的にみて、本年度の研究達成度はやや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、HCRに結合するタンパク質をLC/MSで同定する作業を行っている。HCRにはRANKの活性化を長期維持する機能と、RANKを細胞内へinternalizationさせる機能が有ることが本研究代表者の解析によって明らかになっているので、同定されたタンパク質を破骨前駆細胞においてノックダウンしてRANKの長期活性化とinternalizationへの影響を調べることで、HCR結合タンパク質の機能を明らかにすると共に、分子メカニズムを解明する。また、Yeast-two-hybrid法や、新規開発を試みているprotein array法を用いて結合タンパク質を探索することも予定している。また、破骨細胞分化を人為的に制御するために、HCRのアミノ酸配列と同じ配列のペプチドを破骨前駆細胞に導入して解析を実施する予定である。 更に、HCR依存的にRANKが細胞内へinternalizationされ、このinternalizationがRANKによる破骨細胞分化誘導に重要であることを本研究代表者は見出しており、RANKのinternalizationが破骨細胞分化にどのように関与するかを解明することはHCRの機能解析に繋がると考えられるため、internalizationとRANKシグナルの関係について解析する予定である。 新規破骨細胞分化関連遺伝子の探索において、既に同定した候補遺伝子を破骨前駆細胞においてノックダウンして分化への影響を調べる予定である。更に、1つの候補遺伝子においては遺伝子欠損マウスを入手する手続きを既に進めており、今後は遺伝子欠損マウスの骨の構造的解析も実施し、実際の生体内における遺伝子機能について解析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度中に実施完了予定であったHCR結合タンパク質のLC/MS解析が遅れてしまい、結果としてそのLC/MS解析に必要な消耗品等を購入しなかったため、次年度使用額が生じた。更に、LC/MS解析によって挙げられるHCRへの結合タンパク質の候補をノックダウンし、HCRの機能への影響を解析することも本年度の計画に含まれていたたが実施できず、そのためこの解析に使用する予定であった消耗品代等が消費されず、次年度使用額が生じた。 現在のところ、遅れながらも結合タンパク質の同定作業が進んでおり、本年度に実施予定であったLC/MS解析やノックダウン実験は次年度に実施される予定である。従って、本年度に生じた次年度使用額はこれらの解析費用・消耗品代として使用し、当初の研究計画の目的達成のため実験を推進する。
|
Research Products
(8 results)