2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25861400
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 高成 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (20348767)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 硬膜外麻酔 / がん抑制 / Th1/Th2バランス / Th17 / 炎症性サイトカイン / NK活性 |
Research Abstract |
今回、当研究室で既に確立済みのラット硬膜外カテーテル長期留置モデルを用いて、「硬膜外麻酔が免疫担当細胞natural killer 細胞、T 細胞の周術期機能を保持し、癌増殖を抑える」との仮説の下に、癌再発と周術期免疫機能の変化を探求する研究計画を立てた。 本研究計画の初年度である25年度は、硬膜外麻酔を施した担がんラットモデルの作成を目標として研究を行った。当初は既存の論文(Radiat Environ Biophys 2011;50:199)に倣ってラット結腸癌細胞DHD/K12/TRbをBD-IXラット肝臓の左側葉、左中葉、右中葉にマイクロシリンジによって注入することで担がんラットの作成を試みた。しかし、この方法で肝臓にがんが生着したのは12例中6例と低率であったためにモデルの変更を余儀なくされた。 次に行った方法はラット肝臓がん細胞McA-RH7777をSprague-Dawleyラット肝臓の左側葉、左中葉、右中葉にマイクロシリンジによって注入する方法であった。この方法によりがんが生着したのは10例中8例と良好な成績を収めた。 この新たな担がんラットモデルに対しFreiseらの方法(Anesth Analg 2005;100:255)に従って、第3/第4腰椎椎間より硬膜外カテーテルを挿入し、先端を下位胸椎に留置したラットを無作為に①硬膜外生食投与群と②硬膜外リドカイン投与群に分け、癌細胞の肝臓内増殖に対する硬膜外麻酔の関与を手術侵襲の影響を含め検証してきた。現在のところ標本数が少ないため結論を得るに至ってはいないが、標本数を増やす事で研究を完遂できる可能性が高いと考えられる。硬膜外麻酔による悪性腫瘍増殖の抑制が確認され、その機序が解明されれば、硬膜外麻酔の積極的な周術期の適用に関して新しい知見をもたらし、癌手術患者にとって大きな利益をもたらすと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では平成25年度中に担がんラットモデルを完成させた上で50匹のラットを無作為に①生食投与群(25匹)と②1%リドカイン投与群(25匹)の2群に分け、癌細胞の肝臓内増殖に対する硬膜外麻酔の関与を手術侵襲の影響を含め検証する予定であった。 現在のところ当初予定していた方法とは異なるものの、担がんラットモデルに関してはほぼ確立させて実験を開始している。また、平成25年度の実験の残りは平成26年度の実験と同時に並行して行うことが出来るため、遅延なく研究を完遂できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、前年度の実験の残りを遂行すると同時に、新たな測定を行う。前年度と同様に50匹のラットを①生食投与群(25匹)と②1%リドカイン投与群(25匹)に分ける。14日目にセボフルラン投与による全身麻酔下にラット尾静脈より採血を行い、それぞれ動脈血液ガス、白血球数を測定する。血清IFN-γ、TGF-β、IL-4、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17濃度をELISA法により測定する。血清IL-12濃度、血清IFN-γ濃度、血清IL-4濃度の変化を経時的に測定することでTh1/Th2バランスを知ることが可能である。同時に血清IL-17濃度の変化を測定することでTh17発現の程度を知ることが可能である。また、血清TGF-β、IL-6、IL-10濃度の変化を測定し、免疫抑制分子の趨向を観察する。 14日目にラットを安楽死させ、無菌下に肝臓組織を採取する。肝臓の腫瘍組織と腫瘍から離れた組織から組織標本を作製し、ヘマトキシリン―エオジン染色を施し腫瘍細胞の健常部/壊死部を観察する。また、NK活性を測定するため、肝臓は膜を通して培養液で濾過後、遠心分離機にて単核球を抽出する。NK活性はMTT法によって計測する(Leuk Lympoma 2003;44:1957) 予定である。これらの研究により、硬膜外麻酔による免疫担当細胞への影響を生体内外実験系で検証する。 以上、2年間にわたる研究により、硬膜外麻酔が周術期リンパ球機能の保持を通じ、抗腫瘍免疫機能を保持し、癌再発の危険性を軽減していることを明らかにしたい。また、硬膜外麻酔と免疫抑制分子についての関連を検証したい。 当初の計画では28日間にわたる観察研究であったが、がん細胞株の変更のため観察期間を14日に変更して対応する。
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