2013 Fiscal Year Research-status Report
腎移植における抗CD20抗体投与後の残存B細胞の臨床的意義
Project/Area Number |
25861408
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
齋藤 満 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (80400505)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | BAFF / 2次リンパ節 / 抗体関連型拒絶反応 / 抗CD20抗体 / 脱感作療法 / CD138 / 腎移植 |
Research Abstract |
我々は免疫学的ハイリスク生体腎移植患者に対し、脱感作療法の一部として抗CD20抗体であるRituximab(RIT)を、移植3週前に200 mg/body投与している。同症例群に対し腎移植施行時に骨盤内リンパ節を数個摘除し、また臨床的に必要と判断された症例では脾臓も摘出した。2次リンパ組織である骨盤内リンパ節・脾臓中のB細胞レパートリー(CD20陽性細胞(B細胞)、CD27陽性細胞(記憶B細胞)、CD79a陽性細胞(幼若B細胞を含むB細胞全般)、CD138陽性細胞(形質細胞))の免疫染色強度をスコア化し、またRIT投与前から経時的に血清BAFF濃度を測定し、これらの結果を臨床的に検討した。 対象は当科で同一の免疫抑制プロトコールで腎移植療法を施行された免疫学的ハイリスク生体腎移植レシピエント52例。このうち、移植後3か月以内にAMRを発症した症例は9例であった。まずAMR群(9例)と非AMR群(43例)とを比較・検討したところ、AMR群ではドナー特異的抗HLA抗体(DSA)陽性例の頻度、骨盤内リンパ節のCD138陽性細胞の染色強度スコアが有意に高く、移植7日前、7日後、28日後の血清BAFF濃度が有意に低かった。多変量解析では、骨盤内リンパ節のCD138陽性細胞の染色強度高スコア、移植7日前の血清BAFF低濃度、がAMR発症の独立した危険因子であった。 これらの結果から、①RITを投与した免疫学的ハイリスク腎移植レシピエント症例において、リンパ節中の形質細胞数が多い症例ではB細胞ホメオスターシスが保たれてしまい、血清BAFF濃度が大きく低下しない、②このような症例における脱感作療法としてのRITの投与効果は限界があり(形質細胞はCD20抗原を発現していない)、AMR予防のためには別の方策(Bortezomib投与、IVIGなど)を取る必要があるかもしれない、ということが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本検討開始当初に懸念事項であった、2次リンパ組織におけるB細胞レパートリーの免疫染色(染色強度の評価)、血清BAFF濃度測定(ELISA)の結果が順調に得られたことが、本検討が順調に進展している大きな要因である。 本検討は、国内では平成26年4月に開催された第102回日本泌尿器科学会総会において総会賞ポスター候補に選出され、また海外では平成26年5月に開催予定の米国泌尿器科学会2014においてポスター発表演題として選出され、同7月に開催予定の国際移植学会2014において口演発表演題として選出されるなど高い評価を得ており、その注目度の高さが伺える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに症例・データを蓄積してデータを集積し、統計学的に再度解析を行い、同じ結果が得られるかどうかを検証する(特に、一般にAMRの危険因子とされる抗血液型抗体やDSAの抗体価と比較して、リンパ節中のCD138陽性細胞の染色強度や血清BAFF濃度の方が、AMR発症との関連性が強いのかどうか、について)。 また対象症例群の移植腎機能・移植腎生着率を追跡調査し、AMRが臨床に与えるインパクトについて検討する。 可能であればAMR以外のイベント(日和見感染症など)と本検討で得られたデータとの関連性についても検討する。 平成26年9月までにデータの集積を終了し解析に移り、本年度中には論文化する。
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