2014 Fiscal Year Research-status Report
早産リスク評価における、エラストグラムの有用性の検討
Project/Area Number |
25861465
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
三浦 広志 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (80375302)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 早産リスク / エラストグラム / 切迫早産 / 子宮頸管 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、超音波のエラストグラフィー機能を用いて、内診にかわる客観的な子宮頸管硬度評価を行うことで、切迫早産例の予後判定に有用な診断法となりうるかを検討するものである。エラストグラフィーから得られる組織の硬度が相対評価であるため、硬度既知のシリコンゴムを経膣超音波プローベ周囲に装着して、その物質と頸管の硬度の差を解析することにより硬度を絶対値として数値化した(以後、補正硬度と呼ぶ)。 婦人科疾患で摘出された子宮の頸管部の硬度を、硬度計とエラストグラフィーで評価したところ、二つの測定法には相関関係があることを確認した。子宮頸管前唇、後唇、頸管腺の部位について得られた補正硬度値と内診での硬さの評価を比較したところ、頸管腺部分でのみ有意な傾向にあることが分かった。そのため、頸管腺をさらに、外子宮側、中間部、内子宮口の3つの部分に分けて評価することとした。 妊娠37週以降の妊婦に関して、上記3点の頸管腺の補正硬度を測定した。測定後の10日以内に分娩に至った群、至らなかった群に分けて検討したところ、3点とも有意差を持って異なった。このことは、硬度値から妊娠継続期間を予測できる可能性を示唆している。この結果に基づいて、妊娠22週以降36週未満の切迫早産妊婦と対照群として同時期の切迫症状のない妊婦に対し、同様に硬度を測定し症例の集積を行っている。 これと並行して、直接的に子宮頸管硬度を測定できる、経腟的に使用可能な硬度計の試作機を作成する予定である。測定時の圧迫による頸管部の出血が予想されるため、最小限の圧で測定できるよう設計を変える予定である。安全かつ十分な再現性を持って測定できることが可能となれば、作製後に病院内倫理委員会に諮り承認を得ていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下のように、実施計画に挙げた平成26年度に検討する課題は概ね達成された。 超音波ビームの減衰を最小限に抑え、なおかつ頸管と異なる硬度の物質として、硬度が既知のシリコンゴムを用いた。シリコンゴムシートをプローベの先端に取り付けることとし、十分に客観的測定ができることを確認した。研究実施計画に従った内容で、患者の同意を得る方法および同意文書を病院内倫理委員会に諮り承認を得た。 婦人科疾患で子宮摘出を要する症例に対し説明し同意を得て、子宮頸管の硬度を、筋硬度計とエラストグラフィー機能とで評価した。10例程度施行し、相関関係が認められることを確認した。次に、妊娠37週以降の妊婦50人程度を対象として、シリコンゴムシート装着下でエラストグラフィーを施行した。子宮頸管前唇、後唇、頸管腺の部位について、エラストグラフィーで得られた硬度値と内診での硬さの評価(5段階)を比較したところ、子宮頸管前唇ではプローベによる圧迫が強すぎて測定には適さないこと、子宮頸管後唇ではプローベからの距離があるため超音波ビームが届かず測定には適さないことが分かった。頸管腺部分と内診との相関関係は、有意な傾向を認めたが有意差は得られなかった。そのため、頸管腺をさらに、内子宮側、中間部、外子宮口の3つの部分に分けて評価することとした。この結果に基づいて、妊娠22週以降36週未満の切迫早産妊婦と対照群として同時期の切迫症状のない妊婦に対し、同様に頸管腺を3つの部分に分けて硬度を測定し症例の集積を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も引き続き、妊娠22週以降36週未満の切迫早産妊婦と対照群として同時期の切迫症状のない妊婦に対し、同様に頸管腺を3つの部分に分けて硬度を測定し症例の集積を行う予定である。研究成果が得られたら、学会発表と論文投稿を行っていく予定である。 上述のように内診とエラストグラフィーで得られた推定硬度を比較することにより、子宮頸管の硬度を検討しているが、内診はあくまで主観的な手技である点が否めない。そこで、硬度計を経腟的に使用可能とするべく改良機を試作する。直接的に子宮頸管硬度を測定できれば、エラストグラフィーによる硬度推定に勝ると考えられるが、臨床応用に用いるにはまだいくつかの課題がある。1.膣鏡でしっかりと子宮頸管部を露出するという操作が加わり被験者の不快感が強いこと、2.経腟プローベと異なり測定部分がやや尖っているため、子宮頸管に物理的な刺激が加わり切迫早産症例であれば早産を誘発する可能性があること、3.再現性を確保するための測定条件が定まっていないことである。そのため、現段階では同意の得られた妊娠37週以降の妊婦への使用に限定し有用性を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度においては,研究課題で得られた成果の発表を目的として,学会発表を国内3件程度を予定し,その諸費用と論文投稿のために研究費を使用する予定であった.しかし、早産症例の蓄積が十分で無いと判断したため、症例収集をメインに行ったため支出が抑えられた。結果、予定より研究費の支出がおされられたため研究費の次年度繰越に至った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年に引き続き、筋硬度計を経腟的に使用可能とするべく改良機の試作を行う。現段階での直接的な臨床応用はまだ不可であるが、改良を重なることで、より正確でより安全な機器を作成できる可能性がある。この試作機の開発に研究費の1/2程度を充てる予定である.最後に実施計画に示した通り,この研究課題で得られた成果の発表を目的として,学会発表を国内3件程度を予定し,その諸費用と論文投稿のために研究費を使用する予定である.
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