2013 Fiscal Year Research-status Report
母体の含硫アミノ酸代謝制御による哺乳類卵子老化の予防法の開発
Project/Area Number |
25861479
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
西園 啓文 富山大学, 生命科学先端研究センター, 助教 (10502289)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 卵子品質 / ミトコンドリア / メタボロミクス |
Research Abstract |
卵子老化に代表される卵子や胚の品質の劣化は、晩婚化が進む現代において非常に重要な研究テーマの一つであるが、その原因となる因子や対策はあまり明らかになっていない。これまでに実施してきたマウス卵子の網羅的メタボロミクス解析などの結果から、遺伝的に卵子の品質が悪いDBA/2Jマウスの卵子や胚では、卵子品質が良いC57BL/6Jマウスの卵子や胚と比べて、(1)桑実胚から胚盤胞期でのミトコンドリア活性が低いこと、(2)ミトコンドリア機能に関連するタウリンなどの含硫アミノ酸が著しく低いことを明らかにしてきた。そこで、本研究計画では、タウリンなどの含硫アミノ酸代謝と卵子および胚品質劣化との関連を探り、その予防方法の開発につなげることを目的として、研究を行った。 平成25年度は、当初実施計画に沿って、サブテーマ(1)C57BL/6およびDBA/2マウス卵巣における含硫アミノ酸代謝産物の測定と比較、サブテーマ(2)卵巣、卵子・胚中における含硫アミノ酸の生合成酵素群の発現プロファイルを実施し、C57BL/6Jマウス卵巣と、DBA/2Jマウス卵巣で、アミノ酸の含有量が顕著に異なることを明らかにした。 予定していたサブテーマ(3)タウリントランスポーターレポーターマウスの導入とバッククロスおよびサブテーマ(4)含硫アミノ酸生合成系遺伝子ノックアウトマウスの導入については、交付決定額が予定より減額されたことからJackson研究所からの購入が困難になったため、RNAiおよび阻害剤実験、ウイルスベクターを用いた実験に切り替えて実施することとした。 また平成26年度に実施予定であったサブテーマ(6)In VitroおよびIn VivoでのDBA/2マウス低品質卵子・胚のレスキュー実験を本年度に実施し、品質の悪いDBA/2Jマウス胚でも高率に胚盤胞形成をさせることができる新たな方法を開発し、特許出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で予定していたサブテーマ(1)およびサブテーマ(2)を滞りなく実施し、品質の良い卵子を産生するマウス卵巣と、品質の悪い卵子を産生するマウス卵巣で、アミノ酸の含有量が顕著に異なることを明らかにした。 交付決定額が当初計画よりも減額されたため、予定していたレポーターマウスやノックアウトマウスの導入が困難になったものの、当初計画時から導入困難になった場合のリスクヘッジを折り込んでいたため、すぐにRNAiや阻害剤、ウイルスベクター実験へと変更して、影響を最小限に抑えた。 さらに平成26年度実施予定であったレスキュー実験を行い、胚盤胞達成率が悪いDBA/2Jマウス胚について、高率に胚盤胞に発生させる新たな方法を開発し特許出願した。これらのことから、「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は当初計画の遂行により、品質の悪い卵子を産生するマウスと品質の良い卵子を産生するマウスの卵巣内では、含まれる遊離アミノ酸が大きく異なることを明らかにした。また、その知見を基に品質の悪い卵子・胚のレスキュー実験を行い、このような母胎から産生された卵子・胚でも、至適条件下では高率に胚盤胞に到達することを明らかにした。 これらのことから、平成26年度には予定していたサブテーマ(5)含硫アミノ酸生合成系ノックアウトマウスの解析の代わりに、RNAiや阻害剤、ウイルスベクターを使った実験を進め、キーとなる遺伝子産物の絞り込みを行う予定である(平成25年度に、すでに阻害剤実験の一部を実施し、ある程度の予測はできている)。 さらに平成25年度に一部実施したサブテーマ(6)In VitroおよびIn VivoでのDBA/2マウス低品質卵子・胚のレスキュー実験について、平成26年度は主にIn Vivoでのレスキュー実験を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付決定額が当初計画予算よりも減額されたため、当初計画で予定していたレポーターマウスおよびノックアウトマウスの購入が困難となり、サブテーマ(3)、(4)および(5)について、RNAiや阻害剤実験、ウイルスベクターを用いた実験に切り替えた。そのため、平成25年度中の使用額が減少した。 平成26年度は、平成25年度に一部実施したサブテーマ(6)In VitroおよびIn VivoでのDBA/2マウス低品質卵子・胚のレスキュー実験について、平成26年度については主にIn Vivoでの解析を行う予定としており、生体内へのRNAiや阻害剤、ウイルスベクターを導入するための費用として、使用する予定である。
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