2014 Fiscal Year Research-status Report
習慣流産と関与するヒト子宮脱落膜細胞の子宮NK細胞とレチノイド代謝経路の解析
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25861508
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
黒田 恵司 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60459162)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 子宮内膜間質細胞 / 子宮内膜脱落膜化 / レチノイド / 細胞分化 / レチノイン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】子宮内膜間質細胞の脱落膜化過程は、コルチゾンを活性型コルチゾールに触媒する酵素11betaHSD1の著名な発現を通して局所のコルチゾール生合成を促進する。更にコルチゾールはミネラルコルチコイド受容体と結合し、子宮内膜細胞のレチノイド代謝を制御する。レチノイドは着床後の受精卵や胎児の分化に不可欠であるが、子宮内膜脱落膜化での役割は明らかではない。今回我々は子宮内膜脱落膜化過程におけるレチノイドの代謝経路とその影響について検討した。 【方法】In vitroで子宮内膜間質細胞を培養した後、脱落膜化させ細胞を回収、分子解析を行った。また脱落膜化に用いた培養液にレチノイン酸(retinoic acid: RA)やレチナール(retinal: RAL)を添加し、同様に解析した。 【結果】子宮内膜脱落膜化過程でRA/RAL添加により脱落膜化マーカーPRL, IGFBP1の発現抑制を認め、11betaHSD1の発現もRA濃度依存性に抑制された。また脱落膜化で細胞内レチノイン酸結合蛋白CRABP2の発現は著明に減少し, RA/RAL添加でCRABP2とレチノイン酸受容体RARαの発現が増加した。また子宮内膜の脱落膜変化とともにレチナール還元酵素 DHRS3とレチノール輸送蛋白 RBP4が著名に上昇し、RAL添加で更に発現した。RA不活化酵素 CYP26A1は脱落膜化、RA/RAL添加で明らかな変化を認めなかった。 【結論】脱落膜化によりCRABP2発現の低下を認め、細胞内RA濃度の低下が示唆された。またRA/RALは子宮内膜間質細胞の脱落膜化を抑制した。胎児器官形成に不可欠なレチノイドは脱落膜化過程でレチノールに還元され、RBP4を介して着床や着床後受精卵に働く可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に予定していた子宮内膜脱落膜化過程における細胞内レチノイド代謝産物濃度の変化をクロマトグラフィーで明らかにした。またこれらを制御するレチノイド代謝酵素の変化も明らかにした。また活性型レチノイドであるレチノイン酸やその前駆物質であるレチナールを添加することで、脱落膜化マーカーが減少することがわかった。これらのことから、子宮内膜脱落膜化過程で細胞内レチノイン酸、レチナール濃度を制御することで、細胞分化である脱落膜化を制御し、着床などと関わっていることを明らかにした。これらは当初予定していた研究であるため、順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
レチノイドが子宮内膜膜脱落膜化過程を調節していること、さらには受精卵の着床にも関わっていることが示唆されたため、さらにレチノイドのターゲットとなる細胞分化や免疫寛容のメカニズムを研究する予定である。具体的にはレチノイドにより制御されているPI3K-AKT pathwayやhelper T cellなどについても確認することを考えている。
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Causes of Carryover |
子宮内膜脱落膜細胞におけるレチノイドの細胞分化や免疫寛容に関わる研究を行うため。またこれらを学会発表もしくは論文作成に必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
子宮内膜脱落膜過程におけるPI3K-AKT pathwayやヘルパーT細胞の変化などをPCR, Western Blottingやフローサイトメトリーなどで評価することを検討している。 またレチノイドによる脱落膜化マーカーの抑制を認めたため、細胞障害性についても今後評価することを考えている。
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