2015 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣明細胞腺癌のクロマチン再構築因子を介した発症機構の解明と新規治療戦略の構築
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25861515
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
上川 篤志 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (60534253)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 卵巣明細胞腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、卵巣明細胞腺癌において高頻度に変異を起こしているARID1Aの基礎的な機能解析と癌抑制遺伝子としての役割を明らかにすることが目的である。ARID1Aは、クロマチンの再構築を担うSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体の構成因子であり、卵巣明細胞腺癌のみならず、多くのがんで体細胞変異を起こしていることが明らかとなり、真の癌抑制遺伝子であると考えられているが、その役割は十分に解明されていない。そこで本研究は、ARID1A変異がんに対する治療戦略を打ち立てる上で必要となってくるARID1Aの癌抑制機能の解明を試みた。 ARID1Aを様々な細胞に過剰発現させると細胞増殖を抑制し、逆にRNAiによりノックダウンさせると細胞増殖は促進されたことから、ARID1Aには基本的に細胞の増殖を負に制御する役割があることが示された。ARID1Aの細胞増殖抑制作用を詳細に解析する過程で以下のことが明らかとなった。ARID1Aは、DNAダメージを誘発するような薬剤処理によりARID1Aのタンパク質自身が蓄積されること、この蓄積は、転写レベルの制御ではなくタンパク質そのものが蓄積していることが明らかとなった。この機構には、ARID1Aタンパク質のユビキチン化修飾によるタンパク質分解制御が関与しており、DNAダメージが加わることにより、ARID1Aのユビキチン化が低下することが確認された。これに関わるARID1Aの分解制御に重要なタンパク質ドメインを同定した。さらにARID1Aは、p53と相互作用しDNAダメージ存在時にp53と協調的に作用し、下流の細胞周期抑制因子であるp21の転写を活性化していることを免疫沈降ウェスタン解析、レポーターアッセイなどにより明らかとした。以上のことから、ARID1Aの基礎的な役割として遺伝子の損傷を伴うようなストレス存在時に細胞周期や増殖の抑制を介してがん細胞の出現を抑制していることが考えられた。
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