2013 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺癌に対するキメラ抗原受容体導入リンパ球を用いた養子免疫療法
Project/Area Number |
25861526
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
國井 直樹 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00456047)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | キメラ抗原受容体 / 唾液腺癌 / mesothelin / 免疫療法 / トランスレーショナル・リサーチ |
Research Abstract |
1) 唾液腺癌におけるMSLN発現の検討 まず、ヒト唾液腺癌由来細胞株であるA-253株を抗mesothelin (MSLN)抗体にて染色後、flowcytometryにて測定したところ、A-253ではヒト悪性黒色腫由来Mel526細胞に比してMSLNが高発現していた。さらに当科で外科的治療を行った唾液腺癌10例について、摘出標本を用いてMSLN発現を免疫組織学的に検討したところ、粘表皮癌と腺様嚢胞癌でMSLNの高発現を認めた一方、腺房細胞癌では発現が低く、扁平上皮癌ではほとんど発現が認められなかった。唾液腺導管癌では標本毎でのバラツキが多かった。 2) 唾液腺癌に対するMSLN特異的CAR発現T細胞の抗腫瘍活性の検討 MSLNに対する抗体クローンのss1から作成したchimeric antigen receptor (CAR)のmRNAをエレクトロポレーション法にてヒトCD8 T細胞導入し、これらの細胞をA-253細胞にて刺激したところ、T細胞の活性化マーカーであるCD107aの発現上昇が認められ、さらにこの反応は曝露される腫瘍細胞の数に依存していた。 3) 唾液腺癌に対するMSLN特異的CAR発現T細胞とNKT細胞免疫系の賦活化療法の併用の検討 抗MSLN CARをレンチウイルスにて遺伝子導入したヒトCD3 T細胞を、中皮腫細胞株であるM108にて刺激、さらに純化したNKT細胞とαGalCerをパルスした抗原提示細胞、IFNγの中和抗体をそれぞれ添加後、共培養し、CD107aの発現を解析したところ、2)と同様にCD107aの発現上昇が確認されたが、活性化したNKT細胞の添加により容量依存的にCD107a発現が上昇した。また抗原刺激後72時間におけるCAR発現T細胞の増殖も活性化NKT細胞によって増強された。さらに、これらの反応はIFNγのブロックによって阻害された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、手術検体を用いた唾液腺癌におけるMSLN発現の検討と、唾液腺癌に対するMSLN特異的CAR発現T細胞の抗腫瘍活性の検討に加えて、唾液腺癌に対するMSLN特異的CAR発現T細胞とNKT細胞免疫系の賦活化療法の併用の検討も開始した。さらに、千葉大学医学部附属病院内に遺伝子導入可能なGMPグレードの細胞培養室が完成し、近い将来の臨床試験開始が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
MSLNの機能については未だ不明な点が多いが、細胞接着に関与しているとの報告があり、癌細胞の浸潤・転移に関係があると考えられている。つまり、MSLNの発現レベルと癌の悪性度には正の相関がある可能性がある。これまでの摘出検体による評価は検討数も少なく確定的ではないが、この仮説を支持するものであり、また標準治療のみでは根治することが難しい唾液腺高悪性度癌に対するMSLNを標的とした免疫治療の意義を示すものである。今後、さらに標本数を増やして検討を行っていく予定である。 また、抗MSLN CARを発現したT細胞が唾液腺癌由来細胞株であるA-253上のMSLNを特異的に認識して活性化出来ることが示され、唾液腺癌に対する抗MSLN CAR発現T細胞を用いた養子免疫療法の有用性が示唆された。現在、抗MSLN CAR発現T細胞のA-253細胞に対するin vivoでの抗腫瘍活性についても検討中である。 さらに、CAR発現T細胞の唾液腺癌に対する抗腫瘍活性を高める方法として、NKT細胞の賦活化療法との併用について検討を行ったが、CAR発現T細胞の特異抗原による刺激後の活性化や増殖は、活性化NKT細胞の添加により増強することから、CAR発現T細胞による養子免疫療法とNKT細胞免疫療法の併用による癌治療戦略の可能性が示された。そのメカニズムとして、これらの相乗効果はIFNγ阻害によって容易にブロックされることから、活性化NKT細胞から産生された大量のIFNγにより、抗原刺激後のCAR発現T細胞の活性化が強化されたと考えられた。これらの併用療法についても、現在in vivoで検討中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は手術検体を集積中であり、次年度に大規模に解析を行う予定である。また、今年度は実験環境構築に時間を要したため、in vitroの実験を中心に行ってきたが、次年度からin vivoの実験を行うため、より多くの研究費を要する。 今年度に引き続き、分子生物学試薬・アイソトープ・実験動物・プラスチック器具などの消耗品に加え、成果発表のための国外学会参加費や論文校正費などに使用予定である。
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