2013 Fiscal Year Research-status Report
腺様嚢胞癌における神経周囲浸潤を規定する分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
25861533
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 謙也 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究医 (80648311)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経周囲浸潤 / 腺様嚢胞癌 / 神経栄養因子 / MYB-NFIB融合遺伝子 |
Research Abstract |
腺様嚢胞癌における神経周囲浸潤は局所制御率を低下させ、患者のQOLを低下させることから臨床上非常に大きな問題である。しかしながら、そのメカニズムは十分には分かっていない。我々はその分子生物学的メカニズムの解明を目的に、腫瘍細胞における、神経栄養因子/その受容体の過剰発現、及び、新規MYB-NFIB融合遺伝子/myb過剰発現と神経周囲浸潤の関係を検討している。 腺様嚢胞癌の外科的切除標本に対するNGF、TrkA受容体の免疫染色を施行したところ、免疫染色陽性であった場合、有意差をもって、神経周囲浸潤陽性であった。また、凍結検体において、western blotを施行し、同様の結果を得た。以上のことより、神経周囲浸潤において、NGF/TrkA受容体は重要な働きを行っていることが予測された。その他の神経栄養因子においても今後検討が必要であると考えている。 また、近年発見された、MYB-NFIB融合遺伝子においても検討を行った。融合遺伝子の発現による、臨床的意義は現時点では一定の見解はない。MYB-NFIB融合遺伝子により、mybの過剰発現が起こることがわかっており、まずはmybの過剰発現と神経周囲浸潤の関係を、外科的切除標本から免疫組織学的に検討した。腺様嚢胞癌において高い頻度で、myb過剰発現が生じていることを確認したが、残念ながら神経周囲浸潤やその他の臨床因子との関与は認められなかった。今後は、MYB-NFIB融合遺伝子によるMYB過剰発現をさらに層別化することで、神経周囲浸潤との関連性を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経栄養因子、MYBの免疫染色の条件設定に難渋するも、現在30例程度の解析をほぼ予定通り施行できた。腺様嚢胞癌は、頻度が少ない腫瘍であるため、症例の蓄積が今後の課題である。細胞培養実験においては、現在腺様嚢胞癌においては認証された細胞株が存在せず、初代培養において、NGFによる増殖能力の変化を検討しようとしたが、癌細胞の増殖能が弱く困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍細胞における、NGF/TrkA受容体の過剰発現は神経周囲浸潤と高い相関をもっており、臨床的にも局所制御率の低下といった予後との相関も認めた。他の神経栄養因子ファミリーも神経周囲浸潤との関与が疑われることから、BDNF/TrkBなどの因子においても検討を行う方針である。myb過剰発現と神経周囲浸潤には関連性を認めなかったが、mybの過剰発現は、MYB-FNIB融合遺伝子以外の要因によっても生じることが分かっており、MYB-FNIB融合遺伝子発現による、層別化を行うことで、何らかの関与が発生する可能性がある。融合遺伝子の検出は当初RT-PCRでの検出を検討していたが、凍結保存検体の問題もあり、パラフィン包埋標本からのFISH解析を検討している。 細胞培養実験においては、腺様嚢胞癌の細胞株を樹立し、NGFによる増殖能力の変化を検討しようとしているが、癌細胞の増殖能が遅く難航している。今後はNOGマウスを使用したPDXモデルでの検討も考慮している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
免疫染色及び、細胞培養実験の条件設定に難渋した。さらに蓄積症例が多かったことから試薬が予想以上に必要であり、不足の状態となった。次年度に使用予定であった試薬を前倒しで購入することで実験を継続することができた。また研究の一部を学会に発表し、論文作成中であり、これに対する経費も必要となった。 平成25年度は神経栄養因子を中心にパラフィン包埋切片の免疫染色さらには、ACC培養培養実験を継続する。免疫組織学的は神経栄養因子と神経周囲浸潤の検討は予想以上に早く目標症例数に達したため、早期に一部解析に入ろうと考えている。 平成26年度は組織実験を継続しつつ、MYB-NFIB融合遺伝子の解析も開始したいと考えている。ACC細胞培養実験も継続する。年度後半にも全体の解析に入ろうと考えている。
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