2015 Fiscal Year Annual Research Report
急性中耳炎における粘膜過形成の制御に関わる新たな増殖因子の検索
Project/Area Number |
25861534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴川 佳吾 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (50447398)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 急性中耳炎 / 増殖因子 / 粘膜過形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性中耳炎は高頻度に小児が罹患する代表的な上気道炎であり、また一部の患児ではこの病態が遷延・反復することで、慢性中耳炎や感音難聴などの晩期合併症を来たし、言語発達や学業成績に影響することがあることが知られている。急性中耳炎の主な組織病理学的病態は中耳粘膜の過形成であり、その本態は中耳粘膜細胞の細胞増殖および分化である。この状態が反復・遷延することで 鼓室の肉芽形成・線維化・換気障害などの一部不可逆的な病態を惹起し、上述の晩期合併症に関連することも知られている。それゆえに、中耳粘膜過形成の病理組織学的および分子生物学的メカニズムの解明は重要と考えられる。 昨年までの研究で我々は中耳粘膜過形成を主に制御すると考えられる増殖因子に注目し、DNAマイクロアレイを用いた網羅的検索とその後の中耳粘膜器官培養組織による中耳粘膜増殖アッセイを用いて、HB-EGFによる著明な粘膜増殖効果を示し、急性中耳炎における粘膜過形成に寄与している可能性を見いだしている。 今年度の研究では急性中耳炎における粘膜過形成おいて実際どの程度HB-EGFが関与しているかを確認するために、感染を惹起させた中耳粘膜の器官培養組織用意し、HB-EGFに対する中和抗体を培養液に添加し、粘膜増殖の程度を比較した。結果、非感染粘膜では差がみられなかったが、感染組織では有意に増殖が抑制され、感染時における粘膜過形成にHB-EGFが相応の役割を担っていることが確認された。以上の結果より急性中耳炎による中耳粘膜過形成を抑制するターゲットとしてHB-EGFが有力な候補ではないかと考えられた。
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