2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュ側線器有毛細胞を用いた内耳保護候補薬物のスクリーニング
Project/Area Number |
25861564
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
廣瀬 敬信 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (80555714)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | セブラフィッシュ / 側線器有毛細胞 / 内耳障害 / 内耳保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼブラフィッシュは、容易に多数の個体を得る事ができ、発生・構造も類似している事から、薬剤を中心としたスクリーニング実験等に用いられている。その側線器有毛細胞は、人の聴覚や平衡感覚細胞である内耳有毛細胞に構造学的・生理学的に類似する。これは、人の内耳有毛細胞が進化において魚類の側線器有毛細胞に由来するからだと言われている。げっ歯類を用いた実験では、1種類の薬物を同定するにも数ヶ月の実験期間が必要であるが、このモデルでは有毛細胞が体表面にあるため解剖の必要がなく、1ヶ月で数種類の薬物を同定できる。我々はこの側線器有毛細胞の障害モデルで、内耳保護候補薬物をスクリーニングし、内耳保護薬物を同定する実験を行った。 サプリメント18種類のスクリーニングを行い、最も保護効果のあったケルセチンを始め、3種類の薬物を同定する事ができた。抗酸化実験にてケルセチンが有毛細胞の酸化ストレスを軽減していた事から、保護作用はケルセチンの抗酸化作用によるものと考えられる。更に同定されたケルセチンをモルモットを用いた強大音による聴覚障害モデルを用いて実験を行ったところ、有意に聴覚の保護を認めた。この事から、ケルセチンは聴覚を保護する作用があると考えられる。 次に、漢方薬8種類のスクリーニングを行った。最も保護効果のあった四物湯をはじめとして、8種類全ての薬物に保護効果が認めれらた。四物湯をマウスの培養平衡感覚細胞の障害モデルを用いて保護効果実験を行ったところ、有意に保護効果を認めた。更に、モルモットの強大音による聴覚障害モデルを用いて保護効果実験を行ったところ、有意に聴覚の保護を認めた。この事から、四物湯には聴覚、平衡覚を保護すると考えられる。 これらの薬物を同定できた事から、加齢性・騒音性・薬剤性難聴、平衡障害などの内耳障害に対する薬物予防治療へとつながると考えられる。
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