2013 Fiscal Year Research-status Report
一側喉頭麻痺に対する神経筋弁移植術後の声域と声帯振動の検討
Project/Area Number |
25861568
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
兒玉 成博 熊本大学, 医学部附属病院, 言語聴覚士 (10508667)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経筋弁移植術 / 神経再支配 / 声域の術後経時的変化 |
Research Abstract |
一側喉頭麻痺の嗄声に対する治療として神経再建術の1つである神経筋弁移植術がある。本研究の目的は、披裂軟骨内転術(以下、内転術)に神経筋弁移植術を併用した症例の声域と声帯振動が術後経時的に改善していく過程を明らかにすることである。 対象は、一側喉頭麻痺に対して、内転術に神経筋弁移植術を併用した症例(以下、内転+神経筋弁移植群)、内転術単独および内転術に甲状軟骨形成術I型あるいは声帯内注入術を併用した症例(以下、従来の音声外科群)とした。検討項目は、声域(高さ:患者が出し得る最も低い声から最も高い声 強さ:最も弱い声から最も強い声の範囲)と声帯振動(規則性、振幅、声門間隙)の評価とした。検討時期は、術前、術後1、3、6、12、24ヶ月と経時的に評価した。比較方法は、術前後の比較と術後経時的な比較、両群間の比較、正常値との比較とした。 2014年3月までの症例数は、内転+神経筋弁移植群34例、従来の音声外科群14例であった。平均年齢は、内転+神経筋弁移植群が60.2±12.9歳、従来の音声外科群が63.6±13.8歳であった。 声域(高さ 単位:半音)を術前、術後1、3、6、12、24ヶ月の順に示す。内転+神経筋弁移植群は、5.5、14.5、14.9、16.6、16.2、17.1、従来の音声外科群は、5.7、12.9、10.5、12.6、12.9、12.3であった。術前後の比較では、両群とも術前と術後すべての検討時期で有意に改善した。術後経時的な比較では、両群とも有意差は認めなかった。2群間の比較では、術後24ヶ月で内転+神経筋弁移植群が従来の音声外科群に比べて有意に良好な値となり、内転+神経筋弁移植群では、神経再支配により内筋の筋緊張の再獲得と筋萎縮の回復が起こったためと考えられた。声域(強さ 単位:dB)と声帯振動のデータ解析は来年度以降検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年3月までの症例数は、内転+神経筋弁移植群34例、従来の音声外科群は14例であるが、当施設は音声外科手術を得意とした医師が複数おり、今後も症例数は増える傾向にある。検討項目の声域(高さと強さ)は、データ収集が随時行われており、データ解析も進んでいる。また、声帯振動は、喉頭ストロボスコピーを用いて母音/e/あるいは/i/の無関位発声時の動画を記録し、声帯振動の規則性(0:健側・麻痺側声帯とも規則的に振動しており、対称である 1:健側・麻痺側声帯それぞれは規則的な振動をしているが、非対称である 2:不規則的である)、振幅(0:声帯振動があり、健側・麻痺側声帯とも振幅が同じ 1:声帯振動があり、健側声帯に比べて麻痺側声帯の振幅が小さい 2:声帯振動がない)、声門間隙(0:間隙なし 1:声帯膜様部にわずかな間隙がある 2:声帯膜様部約1/3に間隙がある 3:声帯膜様部約2/3に間隙がある 4:声帯が接触しない)を2名の耳鼻咽喉科医と1名の言語聴覚士で評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
内転+神経筋弁移植群と従来の音声外科群の症例を集積していく。検討項目の声域(強さ)と声帯振動(規則性、振幅、声門間隙)においてデータ解析を行っていく。声帯振動は、評価者3名の平均値を値として採用する。また、各検討項目において、術前後の比較、術後経時的な比較、正常値との比較を解析用電算機器と統計ソフトを用いて行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
声域(強さ 単位:dB)と声帯振動のデータ解析を今年度行う予定であったが、行えていない。 声域(強さ 単位:dB)と声帯振動のデータ解析のための備品・消耗品を購入予定である。また、当施設は音声外科手術を得意とした医師が複数おり、今後も症例数は増えるため、発声機能検査を行う際に用いる消耗品の購入に使用する。さらに、次年度も国内・国際学会で発表予定である。
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