2014 Fiscal Year Research-status Report
骨導超音波補聴リハビリテーションにおける多感覚統合の有用性に関する基礎的研究
Project/Area Number |
25861583
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
松井 淑恵 和歌山大学, システム工学部, 助教 (10510034)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 骨導超音波補聴器 / 最重度難聴者 / 補聴リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
気導音では聞くことができない超音波が骨導による伝達をすることで聴取可能になる。さらに音声の振幅包絡による変調を与えると、元の音声が聴取できる。これらの現象を利用して、重度難聴者向けに骨導超音波補聴器の開発が試みられている。本研究では、最重度難聴者2名を対象とした1年以上にわたる長期のリハビリテーションの結果、単語の聞こえを確認する了解度テストでは、選択肢や文脈が与えられれば両参加者とも補聴器のみの条件でチャンスレベル以上の正答率が示された。また、単音節の聞こえを確認するため57-S語表を用いた語音明瞭度テストでは、補聴器と読唇を併用する条件(すなわち、通常の使用状況)において、リハビリテーションの日程に従ったスコアの上昇が最も顕著にみられた。人工内耳ユーザと同様、長期の骨導超音波補聴リハビリテーションが、聴覚手がかりと視覚手がかりの統合を促進し、音声の聞き取りに有効に働いた、ということを定性的ではあるが示している。 人工内耳ユーザにおけるリハビリテーション効果と直接比較し、医療機器としての評価をするには、トレーニングを受ける人数を増やし、トレーニング期間を統制する実験が必要である。次年度の実験では、骨導超音波補聴器にAIST-BCUHA箱型タイプ(産業技術総合研究所)を利用し、聞き取りにおけるトレーニングの効果がより広汎に起きるかどうかを57-S語表による語音明瞭度テストで確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度はじめに行う予定であった共同研究契約の締結が大幅に遅れたため、年度末まで産業技術総合研究所からの実験機材の提供を受けられなかった。さらに研究倫理委員会の審査が長引いたこと、研究代表者の大学間異動が重なり、実験は不可能という状況が続いた。 しかしながら、これまでに得られた実験データの分析や実験刺激の検討を行い、論文投稿の準備ができた。さらに、音声の発声において聴覚フィードバックの効果が少なからず存在することから、骨導超音波による音声聴取がある状況での発声の違いに関する予備調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究契約先から骨導超音波補聴器の機材貸し出しを受ける。2015年1月に和歌山大学倫理委員会の許可が下りたので奈良県立医科大学と共同で難聴者対象を実験に、短期間の学習効果を測定する実験を開始する。 実験の一方、これまでに分析の終わったデータをまとめてジャーナル論文として投稿する。実験の結果は、国際会議Association on Research in Otolaryngologyにおいて研究発表を行うことを視野に入れている。
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Causes of Carryover |
前職場である筑波大学において、共同研究契約の締結が大幅に遅れたため、2013年12月まで産業技術総合研究所からの実験機材の提供を受けられなかった。さらに筑波大学における研究倫理委員会の審査が長引いたこと、和歌山大学へ異動したことが重なり、2014年の冬に至るまでデータの詳細な分析や実験刺激の検討は可能だが実験は不可能という状況が続いた。 ただし、難聴に関連する研究は近年増えつつあり、各種学会や研究会に参加して今後の研究に役立つ情報収集を行うことができた。予算はこのための旅費や書籍の購入に使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分析の終わったデータをまとめてジャーナル論文として投稿するための英文校閲や出版の費用が必要である。2015年1月に和歌山大学倫理委員会の許可が下りたので奈良県立医科大学と共同で難聴者対象の実験を実施する。この実験専用コンピュータを1台購入予定である。実験参加者に謝礼および交通費を支払う。国際会議Association on Research in Otolaryngologyにおいて研究発表を行う予定である。
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Research Products
(1 results)