2015 Fiscal Year Annual Research Report
中耳手術における移植用細胞シートの臨床応用化にむけて
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25861597
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
山本 和央 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (50408449)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中耳粘膜 / 粘膜再生 / 真珠腫 / 癒着性中耳炎 / 鼻腔粘膜 / 細胞シート / 温度応答性培養皿 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性中耳疾患の代表である真珠腫性中耳炎に対する治療は鼓室形成術といわれる中耳手術であるが、手術が成功するにあたっては、術後に含気ある中耳腔が形成されることが重要である。それには術後の中耳粘膜の再生が最も不可欠な因子であるが、病変の除去や病的粘膜を除去した箇所は粘膜が欠損し、骨が露出してしまうことが多い。術後の粘膜再生が良好であれば、術後聴力も安定し病変の再発が抑えられ、良好な術後経過を期待できるが、術後の粘膜再生が不良であると、再発のリスクが高まる。この結果、従来の手術法では残念ながら再発を確実に予防することができず、未だ確立された治療法はない。そこで我々は術後の中耳粘膜の再生を目的として、温度応答性培養皿を用いて自己の鼻腔粘膜上皮細胞シートを作製し、中耳の粘膜欠損部へ移植する方法を開発した。東京慈恵会医科大学内のGMP(good manufacturing practice)に準拠した細胞培養施設(cell processing center: CPC)の設備を整え、移植にいたるまでの一連の工程が一貫して円滑に稼働するようなシステムを構築した。ボランティアドナーから提供されたヒト鼻腔粘膜組織を用いて、実際にCPCでヒト鼻腔粘膜上皮細胞シートを作製し、数例の試験製造を行い、移植を前提とした品質試験結果と一連の作業工程が問題ないことを十分確認した。これら前臨床試験の良好な結果を踏まえ、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に準じ、厚生労働大臣からの意見書を取得し、ヒト臨床研究を開始した。現在までに5人の真珠腫性中耳炎の患者に細胞シート移植を施行し、有害事象、合併症は認められておらず経過は良好である。
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