2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25861608
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
石羽澤 明弘 旭川医科大学, 大学病院, その他 (50516705)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シェアストレス / 網膜血管内皮 / 網膜血流 / 糖尿病黄斑浮腫 / タイトジャンクション |
Research Abstract |
我々は、平成23-24 年度科研費のサポートを得て、培養ヒト網膜血管内皮細胞にシェアストレスを負荷する実験系を確立し、特に生理的に高いシェアストレスは、血管拡張性、抗血栓活性に働いていることを明らかにしてきた((2011, IOVS)。また、本年度研究費のサポートの元に、この実験系を継続・発展し、低いシェアストレス、つまり血流低下による低灌流の状態では、網膜血管内皮細胞は炎症性サイトカインや接着分子、凝固因子などの遺伝子の発現を増加させ、低いシェアストレスが網膜血管内皮に炎症促進的に働くことを報告した(Exp.Eye.Res.2013)。 次に我々は、当初の研究計画の通り、糖尿病黄斑浮腫の病態に直結する、網膜血管内皮における内側血液網膜関門を形成する閉鎖帯(tight junction:TJ)の形成に注目した。初代ヒト網膜血管内皮細胞に平行平板型流れ負荷装置を用いて、ペリスタポンプで定常的な層流によるシェアストレスを細胞へ負荷後、免疫染色でTJ蛋白、すなわちclaudin、occludin、ZO-1 の発現を蛍光顕微鏡で観察した。特にZO-1では、高いシェアストレスによって、細胞間の発現の増加を確認している。 更に我々は糖尿病黄斑浮腫をターゲットとした臨床研究において、糖尿病黄斑浮腫と血管内皮機能の関連性にも注目した。黄斑浮腫のある糖尿病網膜症患者では、黄斑浮腫のない糖尿病網膜症患者に比べ、全身の血管内皮機能の指標である上腕動脈の血流依存性拡張反応(Flow-mediateddilation: FMD)が低下していることをARVO2013, 第19回糖尿病眼学会、第28回糖尿病合併症学会にて共同研究者の高橋賢伍医員が発表した。 また、糖尿病黄斑浮腫の増悪因子として、腎機能にも着目し、体液貯留の原因となる糖尿病性腎症による慢性腎臓病と糖尿病黄斑浮腫の関連性についても、研究代表者(石羽澤)が上記学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、初代ヒト網膜血管内皮細胞を用いて本研究を進めてきたが、他の研究者にも広く用いられているclaudin, occludinの抗体と本細胞の相性が悪いためか、免疫染色の染色性、ウェスタンブロットでのバンド描出が不良である。もしくは、元々少量の初代細胞から継代を重ねている細胞株であり、タイトジャンクションの形成が不良である可能性も考えられる。また、今後メカニズムを探る上で、遺伝子導入などが可能な細胞を選択すべきであり、成熟細胞であるヒト網膜血管内皮細胞からの変更が必要と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞の変更は既に進めており、現在は株式会社ファクト(仙台)と契約し、ラット由来の網膜毛細血管内皮細胞(TR-iBRB2)の提供を受けている。本細胞は他の研究者にも広く用いられている不死化細胞であり、継代による細胞の劣化の影響を最小限に抑えることが可能で、遺伝子導入も容易である。その他の実験装置、手順に問題は無く、これまで通りの実験が遂行可能である。今後はこの細胞を用いて、網膜血管内皮におけるタイトジャンクションとシェアストレスの関係性を明らかにしていきたい。 具体的実験内容としては、灌流液に高濃度グルコースやAGE を含有させ、高血糖状態を擬態したり、また、VEGF やTNF-αを灌流液中に含有させて、慢性炎症循環を擬態して流れ負荷を行う。このような病的状態を作製し、生理的状態と比較し、TJ の形成がシェアストレスの下でどのように変化するか検討を行う方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先述の通り、これまで使用してきたヒト網膜血管内皮細胞がタイトジャンクションの形成をみる実験には不向きである可能性が考えられ、細胞変更を余儀なくされた。また臨床医として、糖尿病黄斑浮腫の臨床研究に軸足を置いたため、実験のペースが落ちていたことも理由としてあげられる。今後は新しい細胞を用いて、積極的に実験を遂行していく予定である。 本年度は、不死化網膜血管内皮細胞の契約維持、培養培地、実験薬剤などの消耗品購入のために研究費を使用する。また実験装置の増台も検討している。さらに、得られた研究成果を国内・国際学会発表、論文発表などで世界に発信するため、旅費および論文校正・掲載料が必要となる。
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