2014 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレスを指標とした網膜色素変性の新規治療法の評価
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25861610
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
伊藤 忠 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (00431453)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 抗酸化力 / 網膜色素変性 / 糖尿病網膜症 / 網膜静脈閉塞症 / 網膜剥離 / 網膜上膜 / 黄斑円孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜色素変性の病態に及ぼす酸化ストレスの影響を解明することを最終的な目標として、本研究では各種網膜硝子体疾患における硝子体内酸化ストレスにおける疾患間の違いを検討することとした。弘前大学病院眼科にて硝子体手術を施行した症例のうち、増殖糖尿病網膜症PDR 92眼、網膜静脈閉塞症RVO 14眼、網膜剥離RD 47眼、網膜上膜ERM 18眼、黄斑円孔MH 24眼の硝子体サンプルを対象とした。これら硝子体サンプル中の抗酸化能をチオシアン酸塩誘導物溶液中で、3価鉄イオンを2価鉄イオンに還元する力価を測定し、これを抗酸化力(biological anti-oxidative potential, BAP mEq)と定義した。各疾患群の年齢構成はPDR 57.0 ± 13.2, RVO 68.8 ± 10.0, RD 61.5 ± 12.5, ERM 67.1 ± 9.1, MH 66.6 ± 13.8であり、Kruskal-Wallis法にて0.1%未満の危険率で有意に差を認めた。これは主としてPDR群が他疾患に比べて有意に低年齢であったことに起因する。しかしながら、抗酸化力と年齢との相関関係はみられず、この構成年齢層の有意差は抗酸化力を疾患間で比較するのに問題となるものではなかった。実際の抗酸化力を各疾患毎にみてみるとPDR 1.64 ± 0.44, RVO 1.86 ± 0.41, RD 1.91 ± 0.59, ERM 2.17 ± 0.59, MH 2.26 ± 0.45と、MHを対照群とした場合にPDR (P<0.001), RVO (P=0.006), RD (P=0.006)において有意に抗酸化力が低下していることが判明した。このことは眼内の循環障害および視細胞死が進行する病態においては何らかの機転で酸化ストレスが上昇することを誌際している。視細胞死の進行する網膜色素変性においても同様な現象が起こっていることが推定された。
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