2013 Fiscal Year Research-status Report
アクネ菌を用いたサルコイドーシスぶどう膜炎モデルの樹立と解析
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25861620
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮永 将 東京医科歯科大学, 医学部, 非常勤講師 (30599600)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サルコイドーシス / ぶどう膜炎 / アクネ菌 / 強化免疫 |
Research Abstract |
今年度は、1. アクネ菌感染マウスの作成、2. 強化免疫によるアクネ菌感染マウスへの肉芽腫性ぶどう膜炎の誘導の二つの実験を並行して行った。 1. アクネ菌感染マウスの作成:眼組織を含む全身諸臓器にアクネ菌の感染状態を成立させる事を目的に、以下の実験を行った。実験動物には6から8週齢の C57BL/6 マウスまたはBalb/cマウスを用いた。アクネ菌に同定されている2種類の血清型のうち、7割を占めかつ細胞内に侵入出来る事が分かっているserotype I のアクネ菌を実験に用いた。尾静脈からの静脈注射から1週間経過したマウスを屠殺した後に眼球、脾臓、肺、肝臓を摘出し、これらを直ちに10%ホルマリン緩衝液にて固定し、アクネ菌特異的抗体(抗リポテイコ酸抗体)を用いた免疫組織化学染色を行い、全身諸臓器におけるアクネ菌の局在を確認した。これらのうち、脾臓、肺、肝臓にはリポテイコ酸が陽性となり、アクネ菌の感染が確認された。しかし、眼内においてアクネ菌の感染が確認された例はごく少数であり、安定して眼内に感染を成立させる実験系は確立されなかった。 2. 強化免疫によるアクネ菌感染マウスへの肉芽腫性ぶどう膜炎の誘導:アクネ菌感染マウスに アクネ菌特異的な細胞性免疫応答を惹起させ、多臓器の肉芽腫性病変を伴う肉芽腫性ぶどう膜炎を誘導する事を目的に、以下の実験を行った。 アクネ菌死菌をのリン酸緩衝生理食塩水 (PBS) に希釈し、結核死菌を含む完全フロインドアジュバントと 1:1 に混合し、超音波破砕装置を用いてエマルジョンを作成した。これをアクネ菌感染マウスまたはコントロールマウスの背部に、1匹につき 200μl を皮下注射した。これを2週間間隔で、計3回施行した。その結果、アクネ菌感染マウスの脾臓、肺、肝臓において肉芽腫病変が形成されたが、眼内炎症は惹起されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、生体内に持続感染状態のアクネ菌に対する免疫応答を惹起する事で、肉芽腫形成性の炎症像を眼内に生じる事を目的としている。これまで、肺などの眼外臓器においては上記の機序による肉芽腫性炎症を惹起できる事が報告されており、我々の用いた実験系でも再現可能であった。しかし、眼内においてはアクネ菌の持続感染を生じる事が未だ困難な状態であり、そのためアクネ菌を用いた強化免疫によっても眼内炎症を惹起するに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
アクネ菌の眼内感染を成立させるために、以下の実験を行う。 1. 複数の動物種を用いる感染実験:現在主に実験に用いているのは無色素マウスであるBalb/cマウスである。これは、有色素マウスではアクネ菌に対する抗体の染色を免疫組織学的に確認する事が困難なためである。しかし、アクネ菌に対する組織親和性は動物種によって異なる可能性があるため、有色のC57BL/6マウス、ラットの各系統などを用いて感染実験を行う。 2. 免疫寛容を誘導した動物に対する感染実験:アクネ菌は弱毒性の常在細菌であり、軽度の免疫反応によって拒絶、排除されるために感染が成立しない可能性がある。これに対して、アクネ菌に対する免疫寛容を誘導し、その後に感染成立を試みる。免疫寛容の誘導法として、腸管免疫の誘導、前房関連免疫変移の誘導などを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、生体内に持続感染状態のアクネ菌に対する免疫応答を惹起する事で、肉芽腫形成性の炎症像を眼内に生じる事を目的としている。これまで、肺などの眼外臓器においては上記の機序による肉芽腫性炎症を惹起できる事が報告されており、我々の用いた実験系でも再現可能であった。しかし、眼内においてはアクネ菌の持続感染を生じる事が未だ困難な状態であり、そのためアクネ菌を用いた強化免疫によっても眼内炎症を惹起するに至らなかった。そのため、予定していた養子移入実験および眼内炎症像の解析まで研究が進まず、一部を次年度使用とした。 アクネ菌の眼内感染を成立させるために、アクネ菌に親和性を持つ可能性のある他の動物種(有色のC57BL/6マウス、ラットの各系統など)を用いて感染実験を行う。また、アクネ菌に対する免疫寛容を誘導し、その後に感染成立を試みる。これらの追加実験のために、次年度使用額を用いる予定である。
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