2013 Fiscal Year Research-status Report
日本人網膜色素変性患者におけるEYS遺伝子変異の迅速検査法の開発と臨床への応用
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25861626
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
細野 克博 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60402260)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遺伝子診断 / 遺伝子変異解析 / EYS |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜色素変性(Retinitis Pigmentosa、RP)は、失明に至る進行性、遺伝性の疾患群で、眼科領域で最も重篤な疾患である。本疾患に対して有効な治療法が開発されるためには遺伝子レベルでの病因解明が必要である。申請者は研究協力者らと共同で100名のarRP患者を収集し、arRPの原因遺伝子の1つであるEYS(Eyes Shut Homolog)遺伝子の変異解析を実行し、以下の点を明らかにした(Hosono et al., PLoSONE, 2012)。 (a)18 名の患者から7 種の原因変異を同定した。その内6種は新規であったことから、本邦では欧州人とは全く異なる変異によりRPを発症している可能性が高い。 (b)18名中12名にc.4957_4958insA(p.S1653KfsX2)、18名中4名にc.8868C>A(p.Y2956X)の変異を同定した。 上記解析により、日本人arRP患者でEYS遺伝子に変異が検出される頻度は18%と大きく、上記2種の変異は日本人arRP患者の主要な原因変異の可能性が高いことがわかった。それ故、日本人のRP遺伝子診断システムを構築するためには、簡便かつ精密なEYS遺伝子の変異解析法の開発が重要である。しかし、EYS遺伝子はエキソン数(44個)が多く翻訳領域(9498bp)が長いためcDNAを用いて変異解析を行う方が効率的であるが、末梢リンパ球由来mRNAには発現していないため、一般的にゲノムDNAを用いたPCRダイレクトシーケンス法で変異解析が行われている。そこで本研究は、EYS遺伝子が毛根(Nakanishi et al., J Hum Genet, 2010)のような侵襲性の低い組織で発現しているかどうかを検討し、発現を確認できた組織由来cDNAを用いて簡易で精密なEYS遺伝子の変異検査法を確立する事が目的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本人arRP患者の遺伝子診断にはEYS遺伝子の変異解析が重要であるが、EYS遺伝子はエキソン数が多く翻訳領域も長いためゲノムDNAを用いた変異解析法は効率が悪い。 EYS遺伝子は網膜の視細胞に特異的に発現していることが知られているが(Abd El-Aziz et al., Nat Genet, 2008)、毛根などの侵襲性の低い組織を用いた発現解析は行われていない。患者の組織を用いて変異解析を行う場合は、侵襲性の低い組織を用いる事が望ましいため、本研究は毛根などの侵襲性の低い組織由来cDNAを用いてEYS遺伝子の発現解析を行う。EYS遺伝子の発現が毛根等で確認できれば、効率的な変異解析が可能になるのみではなく、ゲノムDNAを用いた解析では評価できなかったエキソンがスキップするスプライシング変異の検出が可能である。 またEYS遺伝子に変異が同定されている18名患者の中で片側アリルの変異のみしか同定されていない患者が9名見つかっている(Hosono et al., PLoSONE, 2012)。変異が片側アレルにしか同定されなかった症例の原因の1つとして、変異が見つかっていない片側アリルの一部エキソン領域に欠失や重複が存在している可能性がある(Pieras et al., Invest Ophthalmol Vis Sci, 2011)。そのような場合、PCRダイレクトシーケンス法だけでは検出できないためにMLPA(Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)解析を併用する必要がある。 本年度は、毛根由来cDNAを用いたEYS遺伝子の発現解析と片側アリルの変異のみしか同定されていない9名の患者にMLPA解析を行った(データは示さない)。 これらの結果は特許出願と論文報告の準備中であり、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度の研究計画を引き続き行う。 MLPA解析に関しては、本年度得られたデータの確証のため、患者家族の協力を得て分離解析を行う。EYS遺伝子の発現解析に関しては、更に詳細に発現解析を行うために毛根以外の組織を用いて解析を行う。 上記で得られたデータは第68回日本臨床眼科学会等で発表を行い、Japanese Journal of Ophthalmology誌等に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は、患者組織由来のcDNAを用いてEYS遺伝子の発現解析を行う。当施設には既に必要な設備は整っているため、当施設には既に必要な設備は整っている。主な消耗品はRNAの抽出精製、cDNA合成、MLPA解析、シーケンシングに用いる試薬である。また研究消耗品の調達に際し、予定額より安価で購入出来たため302,645円の繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該繰越金については次年度の研究消耗品に充てる予定である。 平成25年度の成果報告を第118回日本眼科学会(東京)第68回日本臨床眼科学会(京都)、ARVO 2014 Annual Meeting (アメリカ)等で参加発表を行うための旅費として使用する。また次年度の研究成果の報告をJapanese Journal of Ophthalmology誌等へ投稿を予定している。その際の論文投稿費用と印刷費として使用する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Clinical Phenotype in Ten Unrelated Japanese Patients with Mutations in the EYS Gene2014
Author(s)
Suto K, Hosono K, Takahashi M, Hirami Y, Arai Y, Nagase Y, Ueno S, Terasaki H, Minoshima S, Kondo M, Hotta Y.
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Journal Title
Ophthalmic Genet
Volume: 35
Pages: 25-34
DOI
Peer Reviewed
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