2013 Fiscal Year Research-status Report
炎症惹起時の角膜幹細胞への影響―神経栄養因子を介在し、炎症から防御する可能性―
Project/Area Number |
25861657
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
上野 宏樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30529897)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ニューロトロフィン / 角膜stem/progenitor 細胞 / 炎症反応 / マクロファージ / 炎症性サイトカイン |
Research Abstract |
本研究では角膜幹細胞が生体内で生存、機能していくにあたり、炎症は重要な阻害因子であるという仮説の下、マウス角膜炎症モデルを用いてそのメカニズムを詳細に解明していくことが目標であると考えている。 マウス角膜炎症モデルを用いた幹細胞の機能解析として、角膜にナイロン糸を縫合し炎症を惹起させ、術後経時的に角膜を採取し、フローサイトメトリー、免疫組織化学、Real-time PCR等の手法を用いて幹細胞の定量・機能解析を試みた。 具体的な手法としてはC57BL/6マウス角膜に11-0ナイロンを3針通糸し角膜内に炎症を惹起させ、術後7、14日目に角膜を採取した。コントロールには通糸をしない正常角膜を用いた。また、角膜内の炎症が沈静化した後の幹細胞の変化を検討するために、11-0ナイロン糸を通糸し、7日後に抜糸、抜糸後7日目の角膜の幹細胞の変化も調査した。これら採取した角膜を用いて幹細胞の蛋白定量のために、フローサイトメトリーによるSP(Side population)の測定を行った。 角膜幹細胞測定の方法として、各群の角膜(各n=6)をコラゲナーゼ処理し、角膜細胞を単一化させ、その細胞を、Hoechst33342で染色し、side populationを フローサイトメーターにて解析した。一部の角膜は、上皮と実質をEDTA処理にて分離し、上皮細胞のみを染色した。また、炎症細胞を除くためにCD45を同時染色し、CD45(-)細胞のSPの割合も検討した。術後7日目、14日目とも正常角膜のSide populationに比べ約80%と著しく減少していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス角膜炎症モデルを用いた幹細胞の機能解析(in vivo)として、フローサイトメトリーによるSP(Side population)の測定を行い、また炎症細胞を除くためにCD45を同時染色し、CD45(-)細胞のSPの割合も経時的な結果を得ることに成功した。 幹細胞特異的マーカーであるABCG2、p63、Hes1、Keratin 19などの免疫組織化学染色の解析、Real-time PCRによる幹細胞特異的マーカーの定量も遂行した。炎症誘発眼は得られた結果より、正常眼と比較して幹細胞は減少傾向を示すことが示唆された。したがって概ね平成25年度に予定されていた研究計画は進められたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージは、角膜通糸時に角膜内に多く存在する炎症細胞であることは過去の報告より知られている。角膜通糸後24時間以内に角膜内に浸潤し長期に渡り数多く存在しているマクロファージは角膜通糸部位だけでなく、角膜輪部も含めた角膜全体に渡り確認することが出来る。そこで、マクロファージが最も強く幹細胞の機能に影響を与えると仮定し今後の実験を計画する。マクロファージを除去しての角膜炎症惹起ClodronateLiposomesはマクロファージを特異的に除去できる薬剤として多岐にわたる研究に使用されており、この際の角膜stem/progenitor細胞の定量を具体的に試みる。 またマクロファージは様々な炎症性サイトカインを産生することが知られている。その中でも、IL-1bは炎症惹起時の重要なサイトカインであるが、IL-1bに対する抗体を投与し前述と同様、角膜に11-0ナイロンを3針通糸し角膜内に炎症を惹起させ、角膜通糸後7日目に角膜を除去する。角膜幹細胞の機能解析を行い、コントロール抗体を投与し角膜に炎症を惹起した群と比較検討する。 ただしマクロファージは様々な炎症性サイトカインを産生するため、IL-1b以外の分子が重要である可能性もある。抗IL-1b抗体投与時に角膜幹細胞の動態に変化がなかった場合、他の分子であるIL-1b以外の炎症性サイトカイン(TNF-a、TGF-b)に関しても今後検討していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
角膜内の炎症が角膜幹細胞の蛋白量と機能を低下させることをマウスの角膜炎症モデルを用いて検討することが前年度できたが、角膜をコラゲナーゼ処理後、角膜細胞を単一化させ、その細胞をHoechst33342で染色し、side populationを フローサイトメーターにて解析する最適条件の安定化に時間を要した。従ってどのような炎症細胞が、どのような分子を用いて幹細胞の機能を低下させているのか、更には生体内で炎症が惹起された際の角膜三叉神経と角膜幹細胞の相互間にどのように影響を及ぼしあっているのか等、更なる詳細の一部検証が前年度で間に合わず次年度使用額が生じたと考える。 次年度使用額は平成25年度分の結果の更なる詳細の解明とデータの確実性のため実験を繰り返し、引き続き確固たるものにしていく。また活性化したマクロファージの存在が幹細胞の機能を低下させているという仮説の下に、マクロファージを消失させたマウスの角膜にナイロン糸を縫合して炎症を惹起し幹細胞の機能解析をすること、更に炎症下においてマクロファージは、様々な炎症性サイトカインを放出しており、その代表としてIL-1bやTNF-aが知られているが、これらのサイトカインに対するブロッキング抗体を用いた上で角膜にナイロン糸を縫合し炎症を惹起し、幹細胞の計測を行う平成26年度分の研究計画分にも割り当てていく。
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Research Products
(3 results)