2013 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞由来樹状細胞と放射線治療を組み合わせた、新たながん治療の提案
Project/Area Number |
25861675
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
平野 啓 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (00414334)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | がん / 樹状細胞 / 腫瘍免疫学 / iPS細胞 / 再生医療 |
Research Abstract |
本研究の目的はヒトiPS細胞から樹状細胞(DC)を分化誘導と(ヒトiPS-DC)、ヒトiPS-DCによる免疫細胞治療と放射線局所照射の併用によるがんの新たな治療法の有効性の検証にある。今年度は、当グループで確立しているマウスiPS-DCの分化誘導法を活かし、マウスiPS細胞から未熟DCへの分化誘導を行った。マウスiPS細胞をOP9細胞と共培養し、その後GM-CSFを作用させることでiPS-DCを分化誘導することができた。オバルブミン取り込み能力の検証および混合リンパ球反応試験から、このiPS-DCに抗原を取り込み提示する能力があることも検証された。 この検討過程で、驚くことに、OP9細胞との共培養を経ることなく、マウスiPS細胞に直接GM-CSFおよびIL-4を作用させることでもiPS-DCを分化誘導できることが見出された。この新たなマウスiPS-DCは旺盛な増殖能力を維持するため、本研究が目指す大量の細胞材料の提供に大きく寄与し得る可能性を秘めている。この方法は、iPS細胞のセルラインによってはiPS-DCへ全く分化できないことも見出された。この選択性が何に起因するものであるかは今後の課題となろう。 またマウスiPS-DCを用いた治療モデル実験のために、腫瘍モデルマウスの作製を行った。腫瘍細胞株には、治療効果を視覚的に確認しやすくするために、マウス黒色腫にルシフェラーゼを導入した細胞株(B16-F10-luc2)を選択した。培養したB16-F10-luc2をC57BL/6マウスに皮下注射にて移植することで腫瘍モデルマウスを作成した。 一方でヒトiPS-DC分化誘導の検討にも着手した。ヒトiPS細胞をOP9細胞と共培養することで、造血前駆細胞への分化誘導を促進すると言われる嚢胞状の構造(iPS-sac)を形成させたが、血球様細胞の分化誘導はまだ見出すことができていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスiPS-DCの作製および腫瘍モデルマウスの作製について、ほぼ順調に進めることが出来た。 マウスiPS-DCの作製については、より簡潔な方法で大量の細胞材料を得ることの出来る新たな分化誘導法に繋がり得る知見を得ることが出来た。また、マウスでの検討で得られた知見・経験を元にしてヒトiPS-DCの分化誘導法確立に着手し、造血前駆細胞の分化誘導につながる知見を得た。 マウス黒色腫細胞株を用いた腫瘍モデルマウスを作製することができたが、実験系として安定させるところまでは至っていない。 一方で、作成されたマウスiPS-DCと腫瘍モデルマウスを用いたiPS-DC/放射線局所照射の併用による治療効果については、まだ検討を進めることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
・腫瘍モデルマウス実験系の安定性を向上させ、マウスiPS-DC/腫瘍モデルマウスを用いたiPS-DC/放射線局所照射の併用による治療効果のマウスモデル検討を、早期に進める。 ・マウスiPS細胞とヒトiPS細胞との間には様々な相違があり、マウスiPS-DC分化誘導法をヒトiPS-DC分化誘導法にそのまま適用することは出来ない。これまでに報告されているヒトiPS・ES細胞からの造血細胞分化誘導法を参考とし、より広い視点からヒトiPS-DC分化誘導法の確立を行いたい。 ・本研究の過程で新たに見出されたマウスiPS-DCについても、iPS-DC/放射線局所照射の併用による治療効果を検証したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、これまで当グループで行ってきたマウスiPS-DC分化誘導に関する検討にかかる資材を共有することが出来たため、新たな物品購入をある程度抑えることが出来た。また外部発表などを行う機会を作ることが出来なかったため、旅費等を使用することがなかった。 本年度から開始しているヒトiPS細胞を用いた検討には、細胞材料も含めて、マウスiPS細胞とは異なる研究資材が必要となっている。次年度使用額は次年度分請求額と合わせて、ヒトiPS-DC分化誘導法確立に必要な新たな研究資材の購入に充当する予定である。
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